第1印象は前に書いたとおりで、私は重症な「天地人猛毒症」にかかっていることが判明しました。(苦笑)
しかし、大河ドラマに高杉晋作が出てきたということは画期的なことでした。
さらには、扱いづらいが故に大河から遠ざかっていた高杉晋作に、三味線を持たせて記号化することによって毒を抜くという斬新な決断。
毒を抜かれた高杉晋作は、坂本龍馬のソウルメイトにされた挙げ句に、武力倒幕という牙も抜かれて、ただただ龍馬の奇跡を信じて大政奉還を願う弱々しい三味線弾きにされてしまいました。
バカじゃないのか?
もう、この手法がアリならば、思想的にヤバいとか行動がヤバくて大河を初めとする歴史ドラマでスルーされギミな人々(甘粕正彦とか近藤重蔵とか)もバンバン出せる。
甘粕なら拳銃を持たせるとか、近藤なら忍者装束とかで、平和や政府(幕府)への忠誠を語らせればいいんだもん。
龍馬伝的な扱いをされる高杉晋作なら出なくて結構!
高杉晋作から「思想」を奪い取ってしまったら、それは高杉晋作じゃないでしょ。
伊勢谷友介さん演じる高杉晋作は、パッと見の雰囲気が良いだけに期待が大きかった分、失望も大きかったです。
いや、龍馬との海辺のシーンとかも良い演技でしたよ。
「あの世でね」
ジーンときました。
農民たちとの桜のシーンも良かったですよ。
でも、そのあとの入水自殺にしか見えない場面は余計。
奇兵隊の旗を託される場面も余計。
前にも書いてしまいましたが、農民をいっぱい出して為政者を褒め称えるっていう大河テンプレ演出は勘弁して貰えないだろうか。
…木戸が高杉のところに見舞いに行っているところに、たまたま龍馬が長州にやってくる。
龍馬と木戸が語らっているところに、たまたま農民たちがやってきて小競り合い。…
なんか、まずは龍馬・高杉・木戸の場面を撮って、次は龍馬と木戸を外して桜のシーンを撮ったって、やっつけ感が見え見え。
馬関で目立っていた麦わらの奇兵隊士役の人に卵を持たせて、「みんな心配している…」などとセリフで伝えるくらいの方が桜の場面も生きたように感じます。
前の百姓大量押し寄せと後の入水自殺もどきで、桜の場面の余韻はぶち壊しでした。
高杉晋作の志半ばでの無念さを表したかったのは分かりますがね。
あと、伊藤は?井上は?
主役は龍馬ですから、後事を龍馬に託すのは仕方ないでしょうが、龍馬は「にっぽんじん」でも高杉は「長州人」。
高杉が「長州人」の枠を超えて「日本人」という概念を理解し、大政奉還を支持して龍馬だけに託すというのは違和感があります。(高杉晋作という記号だから仕方ないのですが)
百姓をドヤドヤ出すくらいなら、木戸に加えて伊藤・井上などと共に龍馬が託されるくらいが違和感少なく見れたと思います。
雑だなぁと思うのが、龍馬が「奇兵隊は自分の国を守るために云々」というセリフがありましたが、あれは「長州を守るために…」とすべき。
「日本」と「土佐・長州・薩摩」という言葉を吐くときに、龍馬と高杉・木戸・西郷・中岡では意味合いが大きく違う。
龍馬にとっての「国」は「日本」であり、他の者たちにとっては「藩」でしかない。
そこの区別がルーズだから、大政奉還に向かって行ける龍馬と、武力倒幕に向かっていく木戸・西郷の差が描ききれずに、ただ感情の行き違いのようにしか見えないのではないでしょうか。
そこらへんが煮詰められていないので、行き当たりばったりに耳障りの良い言葉で繋いでいるようにしか感じない。
あと、人の死に頼り切ったドラマ作りは大河には向いていないと思いますね。
その他も絡んでいきましょう。(笑)
アバンから弥太郎登場までの場面。
おかしなことを言いまくりでしょう。
「自由」という言葉は、福沢諭吉が明治になって作った言葉です。
さらに、土佐藩の後ろ盾?で自由?
龍馬伝的には、薩摩に雇われると薩摩にドナドナされて船乗りにされてしまうからカステラ社中を作ったことになっていますが、実際には薩摩に雇われて給金まで貰って、薩摩の後ろ盾で使いっ走りをしていたわけです。
薩摩が土佐に変わっただけ。
「給金も出してくれるがか」
は、あまりにも白々しい。
運転をしながら見ると、ギャグパートと思って見れるのですが、真面目に見るとおかしなところだらけです。
奉行所の後藤様の怪演・弥太郎とお慶の場面から、お龍の長州行きやいろは丸は、描きづらいところを上手くスルーして繋いだと思います。
お龍のヒステリーや大洲藩家老の切腹など、このスタッフでは描きたくない場面の連続でしょうからね。
高杉さんのところは散々書いたので、すっ飛ばして久々の中岡慎太郎。
上川隆也さんの雰囲気が良いので流してしまいがちになりますが、大政奉還を目指す海援隊に対抗するために、武力討伐を目指す陸援隊ってなによ?
しかも、同じく武力討伐を目指す木戸には、目に涙を浮かべて大政奉還を熱弁してたのに、中岡には「分かった」って…。
しかし、黒幕作りをしたいがために、中岡ともこの時点で袂を分かつことになったようですが、龍馬暗殺の場面では、中岡との言い争いの最中に襲われた説をとるんですかね。
悪口ばかり(苦笑)なので、良いところも。
高杉との海辺の場面のあとの龍馬とお龍。
珍しく座って落ち着いた場面で、一瞬ですが良かったです。
徐々に龍馬の死へのまとめに入っているようで、見ているものには辛い場面でもありましたが…。
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