福島第1原発:海外専門家「除染作業決定に住民参加必要」
東京電力福島第1原発事故による放射性物質の除染に海外の知恵を取り入れようと福島市内で16日、政府主催の国際シンポジウムが開かれた。海外の除染活動に携わる専門家が出席し、除染作業や除染後の汚染土壌の貯蔵について「意思決定に地元住民など利害関係者の参加が必要」と口をそろえて助言した。
アイルランド放射線防護研究所のアン・マクガリー所長は1969年に米国の核兵器起爆装置製造工場で起きた火災事故を例に挙げて説明。「当初、飛散したプルトニウムの浄化基準などを国が一方的に決めてしまったため住民の抗議行動が過熱した。しかし、その後、利害関係者を入れて制度を作り、信頼性が高まった」と話した。
86年のチェルノブイリ原発事故(旧ソ連)後の除染活動に参加した米パシフィックノースウエスト国立研究所の大西康夫氏は、地表の放射性物質が降雨などの後、どう移動するか予測した分布図を作製して除染計画を立てるよう提言。「ウェブ上で公開し、意思決定に住民を入れることが重要」と強調した。
フィンランド放射線及び原子力安全局放射線・原子力安全センターのタリヤ・イカヘイモネン理事は、チェルノブイリ事故後の除染活動で得られた知識として、「(放射性物質による汚染を防ぐため)事故後2年間は(家畜の排せつ物や落ち葉などから作る)堆肥(たいひ)を土壌改良に使用してはいけない」と助言した。【藤野基文】
毎日新聞 2011年10月16日 22時08分(最終更新 10月16日 22時18分)