あまりにも素晴らしい内容なので、リンクを貼ることも考えたのですが、そのまま転載させて頂きます。
【 六号通り診療所所長のブログ 】
セシウムの内部被曝をどう防ぐか?
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理をして、
すぐにやらなければいけない量の膨大さに戦意を喪失しつつ、
中断して今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
先日福島県産の牛肉から、
1キログラム当たり510ベクレルの、
セシウム137が検出された、
という報道があり、
再検査で否定されました。
セシウム137とセシウム134は、
放射性ヨード131と同様、
原子炉の事故から漏れ出して大気中に四散する可能性の高い、
放射性物質で、
通常は自然環境には存在しません。
この放射性セシウムは、
人体にどのような影響を及ぼし、
かつまたそれを予防する方法はあるのでしょうか?
今後セシウムに環境が汚染される可能性があるとすれば、
僕達はその事実を、
どのように受け止めれば良いのでしょうか?
今日はこの点を、
僕の理解の範囲で考えます。
今日の内容は僕の調べた範囲で、
事実と思えることのみを書くつもりですが、
浅学のため誤りがあるかも知れません。
もし明らかな誤りがあれば、
「優しく」ご指摘頂ければ幸いです。
なお、以下の記述は内部被曝に限った話です。
外部被爆に関しては、
放射性物質の違いを、
内部被曝ほど考慮する必要はありません。
では、始めます。
今日のポイントは3点です。
1点目はセシウムの内部被曝はどのような形態を取るのか、
ということです。
放射性ヨードは甲状腺に集まり、
主に御用学者の方は異論があるでしょうが、
お子さんが被曝すると甲状腺癌の増加に繋がります。
それでは、セシウムは人間の体内で、
どのような動態を示すでしょうか?
それがまず第1点。
2点目はその動態的な特徴から、
セシウムの内部被曝は、
どのような影響を人間の身体に及ぼすのか、
ということです。
その影響は分かっているのでしょうか?
それともまだ分かってはいないのでしょうか?
これが第2点目です。
最後の3点目は、
それではセシウムの内部被曝を、
防ぐ方法はないのか、ということです。
甲状腺の被曝予防のヨード剤の使用のように、
セシウムの影響を最小限にする方法はないのでしょうか?
これが3点目です。
これは御存知の方もいらっしゃるかと思いますが、
排泄促進剤が昨年暮から日本でも発売されています。
ちょっとまたややこしい話になりますので、
上記の点にご興味のない方は、
以下はお読み頂かなくて結構です。
それでは先に進みます。
まず、セシウムの動態についてです。
セシウム137の半減期はおおよそ30年、
セシウム134の半減期はおおよそ2年です。
この半減期というのは、
誤解された記載を書かれている方もいるのですが、
その物質の放射能自体の、
自然な減衰のことです。
より正確な表現を使えば、
物理的半減期のことです。
つまり、身体に入ったセシウムも、
身体の外にあるセシウムも、
その放射線量は同じように時間と共に減って行き、
セシウム137であれば、
30年後には自然と半分の量の放射線になる、
ということです。
これは人間様の身体に入った放射能が、
おしっこや便から排泄されて、
減って行く、と言う意味ではありません。
つまり、人間様への影響ではなく、
自然への影響なのです。
(分けて考えるために、
これを生物学的半減期と呼ぶことがあります)
放射能の影響というのは、
人間様への影響だけで論じてはいけないと僕は思います。
人間様は強いので、
それほどの影響を放射能からは受けないのです。
しかし、もっと弱い動植物は自然には数多く存在し、
放射線の影響を受けるのです。
そして、自然と人間とを繋ぐ位置に、
まだ弱い存在の胎児や乳幼児が存在するのだと思います。
お子さんを守る、というのはそういう意味だと考えます。
放射能なんて大したことないよ、
少量だったらむしろ身体にいいんだぜ、
騒ぐのは馬鹿だよ、
などと言う方がいますが、
勿論恐怖を煽ったりしないため、
という意味合いは分かるのですが、
僕には環境への影響を忘れた、
人間様だけの意見のように思えて、
ある種の悲しさを感じるのも事実です。
さて、その放射線の半減期とは別に、
人間の身体は外部から取り込まれた、
放射性物質を排泄します。
セシウムは100日から200日の間には、
体外に排泄される、
とよく書かれていますが、
これはそうした意味です。
一旦身体に入ったセシウムは、
その大部分はその放射能がまだ残存するうちに、
身体の外へと排泄されるのです。
ただ、より正確には生物学的半減期が平均94日ですから、
別に100日で排泄される訳ではありません。
概ね半分以下になるだけです。
このことも、
よく理解せずに書かれている方がいます。
ちなみに、放射性ヨード131の物理学的半減期は、
御存知のように8日ですが、
生物学的半減期は80日で、
この点ではセシウムとあまり変わりません。
これは甲状腺に取り込まれたヨードが、
数十日はそのまま留まるからです。
ただ、お子さんはもっと早く排泄されます。
ヨードの場合、
ヨードは身体にも通常あるものですから、
その代謝で放射性ヨードの分布も、
考えれば良いのですが、
セシウムは通常身体に必要な元素ではないので、
そうした直接的な推論が出来ません。
ただ、カリウムやナトリウムという一価の陽イオン、
特にカリウムと非常に良く似た動態を取ることが、
動物実験のデータなどから分かっています。
たとえば、カリウムが不足した条件下では、
生体はカリウムの代わりにセシウムを取り込みます。
これはカルシウムとストロンチウムの関係に似ています。
要するに生体は、
基本的にカリウムとセシウムとを、
あまり区別していないのです。
従って、カリウムの動態を考えれば、
内部被曝した放射性セシウムが、
どのような動態を取るかが分かります。
放射性ヨードの代謝が、
ヨード代謝と甲状腺の問題であるように、
放射性セシウムの代謝は、
電解質代謝の問題にほぼ置換されます。
カリウムは細胞の中に多く、
外には少ない陽イオンです。
身体に取り込まれたカリウムは、
腸肝循環といって、
腸から吸収され肝臓に廻り、また腸に戻る、
という1つのサイクルを描いて循環します。
その過程の中で、
身体の細胞に必要に応じて取り込まれるのです。
最も多く移行する細胞は筋肉です。
従って、吸入や経口で取り込まれたセシウムも、
最も侵入し易い細胞は、
筋肉細胞である、
ということが言えます。
これは細胞内のカリウムと、
置き換わる形式で、
細胞内に入るのです。
ただ、たとえば僕が以前研究していた膵臓のβ細胞
(インスリンを分泌する細胞ですね)も、
インスリン分泌の際には細胞内にカリウムが流入します。
この時細胞外にカリウムが少なく、
セシウムが多ければ、
当然カリウムの代わりにセシウムが、
β細胞の中に入るのです。
つまりセシウムは全身の細胞に入る可能性があり、
ただ、ある程度の期間そのまま細胞内に留まるのは、
筋肉の細胞に限る、と考えて良さそうです。
この性質を利用して、
セシウム131は心臓の筋肉の検査に、
使用されることがあります。
所謂心筋シンチです。
セシウム131を注射で投与し、
心臓の筋肉に集まるセシウムの量を見て、
心臓の状態をチェックするのです。
また、手元の資料によると、
セシウムにはストロンチウムほどではないですが、
骨親和性があると書かれていて、
少量は骨及び骨髄への移行が考えられます。
以上が1点目のセシウムの身体における動態です。
では、2点目に移ります。
放射性セシウムは、
内部被曝によりどのような影響を、
人間の身体に与える可能性があるでしょうか?
理屈から考えると、
筋肉に蓄積したセシウムが、
長期間そこに留まり放射線を出すことによって、
筋肉由来の癌が増えたり、
また心臓の筋肉に影響を与えることにより、
心筋の障害を起こしたりする、
という可能性が考えられます。
骨親和性が若干あることからは、
骨肉腫などの骨由来の腫瘍や、
造血器の障害が予測されます。
ただ…
チェルノブイリの追跡調査では、
被曝後に筋肉の癌が増えた、
というような報告はありません。
それ以外の上記の内容に関しても、
明らかにセシウムの内部被曝の影響が、
確認されたことはないようです。
つまり、セシウムの内部被曝による、
放射性ヨードのような影響は、
現時点では不明です。
それでは3点目ですが、
放射性セシウムによる内部被曝の影響を、
防ぐ方法はないのでしょうか?
セシウムの影響は主に筋肉の被曝にあります。
つまり、人間の影響を離れて考えると、
牛肉や豚肉が、
セシウムによる家畜の内部被曝により、
放射線を持ち、
人間の食用に適さなくなる危険があるのです。
これは畜産農家の方にとっては、
非常に深刻な問題です。
僕の手元に、
昭和38年に牛の体内における、
セシウム137とストロンチウム90の、
被曝量を調べた日本の文献があります。
当時は米ソを中心とした核実験の影響により、
日本の土壌も放射能に汚染され、
そのことの農産物や畜産に対する影響が、
非常に危惧されていたのです。
そのため農林省を中心に、
そうした調査や研究が多く行なわれ、
微量ではありますが、
持続的に日本で飼育された牛においても、
放射性セシウムや放射性ストロンチウムが、
検出されていたことが分かります。
当時豚や牛の体内の放射性セシウムを、
減らすための方策も色々と研究され、
豚でセシウム134を用いた研究では、
餌のカリウムが少ないと、
身体へのセシウムの取り込みが増し、
かつ排泄が減る一方で、
餌のカリウム量をある程度増やすと、
セシウムの取り込みは減少することが、
示されています。
その後、
セシウムの腸管からの排泄を促進する、
一種のキレート剤が開発され、
最初は動物に、
それから人間にも高度の被曝時に限って、
治療目的で使用されています。
奇しくもその日本での発売は昨年の12月です。
この薬の詳細については、
明日ご説明するつもりです。
これは勿論重度の被曝の時のみ、
治療的に使用する薬です。
予防効果はありません。
ただ、上記の動物のデータは、
人間でもある程度は当て嵌まるものと考えられます。
つまり、野菜や果物など、
カリウムを適度に摂取し、
カリウムの不足した状況になければ、
それほどのセシウムは、
身体には取り込まれません。
一方でカリウムが明らかに不足した状態にあると、
セシウムが身体に取り込まれ易く、
その影響も長い期間に渡る可能性が高くなります。
以上の点は1つのヒントになると思います。
ただ、是非確認して頂きたいことは、
過剰にカリウムを摂ることが、
より健康に良いとは言えない、
という事実です。
腎機能が正常だという前提があれば、
通常よりカリウムの摂取を増やしても、
特に問題はありませんが、
腎機能が悪い方では、
カリウムが体内に蓄積し、
それが体調を悪くする原因になることがあるのです。
僕の言いたいことは、
ヨードの不足やカリウムの不足、
そしておそらくはカルシウムの不足も、
いずれも放射性物質の体内への取り込みを、
増加させる可能性がある、
ということです。
バランスの良い食生活こそ重要で、
一部の食品を大量に摂ることが、
予防になる訳ではありません。
その点は充分ご留意の上、
記事をお読み頂ければ幸いです。
今日はセシウムの内部被曝についての話でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
なかなか勉強になる記事でした。
自分が疑問に思っているところやあやふや・考え違いなども分かったように思います。