電力使用制限令1日発動 企業、節電対策練り直し
2011/06/30 00:46
東京電力と東北電力管内の大口需要家に15%の節電を義務付ける電力使用制限令が7月1日から発動されるのに伴い、企業が東日本大震災後に導入した節電対策の練り直しを急いでいる。各社は店舗の省エネ化、工場の夜間操業、従業員の自宅勤務などを進めているが、生産の回復が見通しより早いため、長期休暇の圧縮と節電の両立を迫られるメーカーが出始めた。電力使用の制限を受けない個人も、節電効果を上げるため、我慢を共有することになりそうだ。
「店を真っ暗にして『節電しました』では意味がない」
セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は、利用者が不便を感じないかどうかを気にする。
同社傘下のコンビニエンスストア大手、セブン-イレブンは、7月上旬までに約5千店舗で店内照明と看板にLED照明を導入する作業を進めている。太陽光パネルも約千店舗に設置する予定で、明るさを確保しながら、1店舗当たりの電力消費量を約25%削減できるという。
しかし、不便を完全にくいとめる節電は難しい。
首都圏の鉄道各社は、電力使用のピークである平日の午後に「間引き運転」を実施する。JR東日本は南武線で運行本数を40%、東海道線で15%削減。東京メトロも20%運行を減らす。朝夕のラッシュ時は使用制限令の対象外のため通常運転を続ける。
一方で、すでに決めた節電対応を見直す動きも出始めた。
自動車業界は電力不足に対応するため、7月から9月までの3カ月間、土、日曜日に出勤して、木、金曜日を休業とする対応を決定した。だが東日本大震災での被災により一時的に滞った部品供給が予想より早く回復し、遅れを取り戻す動きが本格化。トヨタは7月について、休業予定の木、金曜に一部で休日出勤することで労働組合と合意した。ホンダも一部操業に踏み切る計画だ。
電機業界ではソニーが当初、事業所ごとに交代で2週間ずつ休業する計画だったが、1週間に短縮した。
今後は回復する生産と、節電効果とをどう両立させるかが課題になる。
電力消費が多い電炉業界では、日本冶(や)金(きん)工業がステンレスを生産する川崎市内の工場で昼間の稼働を一部停止する。復興需要が高まれば「節電が復興の妨げになることもある」(関係者)との懸念がある。
取り組みは広がりをみせている。ファミリーレストラン大手のすかいらーくグループは、ガストなど350店で窓際にゴーヤーを植えた。緑化効果で店内の温度上昇を防ぐ作戦だ。日立製作所も工場や研修施設の壁面につる性の植物をはわせる対応を進めている。
それでも、電力需給が綱渡り状態であることに変わりはない。このままでは、使用制限令の対象外である家庭や小規模店舗などの節電対策に焦点が移る可能性もある。日産自動車や日本マクドナルドは従業員の家庭での節電量を競うコンテストで、家庭での節電の後押しをはじめる。電力使用制限の影響は、じわりと生活に及びそうだ。