福島原発行動隊、原発を視察 メンバーからは報告に「幻滅した」の声
NCN 2011年7月19日(火)19時40分配信
「将来を担う若い世代に、放射能被ばくのリスクを負わせられない」と、60歳以上の元技術者・技能者が声をかけあって結成された福島原発行動隊は、2011年7月12日に福島第1原発で初めての視察を実施。その報告会を7月14日に、参議院議員会館で行った。この模様は、ニコニコ生放送でも中継された。
視察をしたのは代表の山田恭暉さんを含む5人。1号炉から3号炉は視察の基準よりも放射線量が高いため、建屋の中に入ることができず、4号炉や汚染水処理施設、汚染水を溜めるメガフロートなどを見学したという。
参加者の1人、塩谷宣弘さんは、「構内は整然としており、見学した範囲では行動隊の皆さんのスキルを活かせるような現場には出会えなかった」とし、「入れなかった1号炉から3号炉の中で、我々のスキルを活かせる可能性は残っていると思う」と報告した。
折井祥一さんは、同じく参加者の宮崎英紀さんと、「これだけのものを3ヶ月で良くまとめたものです。我々なら1年はゆうにかかるものですが...。1年でもできないかなあ」という話をしたと明かし、
「この設備を作り上げた現役の青年・壮年技術者に脱帽した次第であります。老人の出る幕ではない。暖かく見守り、受けた相談に真摯に対応する。これが晩節を汚さない、敬老される技術者の道ではないかと痛切に感じました」
と感想を述べた。
どうやら、見学した範囲では作業が順調に進んでおり、案内をしてくれた東電の担当者に話を聞いても、一時的に作業員が不足した時期もあったが、現状では足りているということのようだ。
■行動隊が入り込む余地はあるのか
果たして、こうした中で行動隊が作業する余地はあるのだろうか。代表の山田さんは、
「東電さんから『仕事がない』と言われることは予想されたこと。今の体制のままやって仕事がうまく行くのであれば、ある意味、邪魔ものが入らない方が仕事は楽ですよね」
としつつ、
「だからといって、私どもが最初に提起している『若い人の被曝を年寄りが引き受けよう』ということの価値がなくなるわけではありませんから、プロジェクトを辞めるということはまったくない」
と続ける。山田さんは、現状で作業員は足りているとしても、中長期的な視野に立ったとき行動隊が必要になるという見方をしており、原発に限らず活動範囲を広げて行くことも議論して行きたいとする。
■「幻滅した」の声にどう応えるか
だが、原発の視察を終えて、「スキルを活かせるような現場には出会えなかった」、「作業員は足りている」など、発足当時と比べ、トーンダウンしている感は否めない。報告会に集まった行動隊のメンバーの中には、
「『今から結婚して子供作るような人たちはいい。お前らはどっか行ってろ。俺が行くから』って。そういう気持ちから行動隊を始めていると思っているんで、今の話し合いには幻滅しています」
など、苛立ちを隠せない人も多く見られた。
今後、行動隊は視察参加者たちの意見を整理し、話し合いを通じて方針を決めるとのことだが、現実的な諸問題を考慮しながら、400人を超えるメンバーをどうまとめていくかが問われる。誰もが「何か自分に出来ることを」という熱い思いを持っているだけに難しいところだが、行動隊はあくまでも「シニアボランティア」集団であって、義務でもなければ、「決死隊」でもない。視察前にメンバーの1人が語った「年寄りの暇つぶしでやるのが一番いい」という言葉が改めて重要になってくるのではないだろうか。