ヨウ素・セシウム県内到達 3月25日から1ヵ月「人体に影響ない」
2011年10月02日09時53分
提供:琉球新報
3月11日以降一連の福島第1原発事故で放出された放射性物質が気流に乗り同25日から1カ月間にわたり沖縄に到達していたことが、琉球大機器分析支援センターの調査で分かった。福島から沖縄へたどり着くまでの気流の軌跡も解明した。到達したのは放射性セシウムとヨウ素で、いずれも自然界に存在しない。最高値は4月6日にセシウム137が1立方メートル当たり1・56ミリベクレルを記録した。到達量はいずれも微量なため、同センターは「人体に影響はない」としている。
調査は、西原町の琉球大建物3階ベランダに計測器を設置。掃除機のように1週間で5千立方メートルの空気を吸い込み、フィルターに付いた粉じん試料を精密機器で分析するもので、約10年間続けている。空気中の放射性物質の変化を正確かつ精密に測定できる、県内で最も優れた分析機器という。
人工の放射性物質が計測されるまでは1週間ごとに計測していたが、それ以降は毎日、試料を採取。その結果、3月25日にヨウ素131、同31日にセシウム134と137を観測した。
最高値はいずれも4月6日で1立方メートル当たりヨウ素131が1・27ミリベクレル、セシウム134が1・31ミリベクレル、セシウム137が1・56ミリベクレルだった。その日以外はヨウ素は0・6以下、セシウムは0・15以下を推移した。いずれも1カ月間観測された。4月25日以降は観測されていない。
国頭村辺戸岬にある国立環境研究所の計測器のフィルターを調べたところ、これらの放射性物質が検出された期間、同様の量が検出された。このため沖縄本島のほぼ全域に到達していたと推測できるという。
4月6日午前0時の気流の軌跡を見ると、大陸から福島を通った気流が太平洋を回り沖縄に到達している。琉球大機器分析支援センターの棚原朗准教授は「沖縄は冬、東か北東の風がよく吹く。それに乗ってきたのだろう」と分析。「約10年間の測定で自然界に存在しない放射性物質が検出されたのは初めてだ」と話した。
(新垣毅)
<用語>放射性セシウム、ヨウ素
ウランの核分裂によって生成された人工の放射性核種。原子力発電所の事故などで環境中に放出される。セシウム137は半減期が約30年。セシウム134の半減期は約2年。人体に取り込まれると筋肉などに集まり体内被ばくを起こす。放射性ヨウ素131の半減期は約8日。体内では甲状腺に沈着、蓄積し甲状腺がんを引き起こす。