緊急時避難準備区域 解除
9月30日18時42分
政府は、原子力災害対策本部を開き、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて指定していた「緊急時避難準備区域」について、原発の状況が改善してきたとして、指定を解除しました。
「緊急時避難準備区域」は、福島第一原発で緊急事態が生じた時に備えて、避難の準備が求められている地域で、原発から半径20キロから30キロ圏内を中心に、福島県の南相馬市、田村市、広野町、楢葉町、川内村の5つの市町村が指定されていました。これについて、政府は、30日夕方、全閣僚が出席して原子力災害対策本部を開き、原発の状況が改善してきたこと、5つの市町村が「復旧計画」の策定を終えて学校や病院の除染などの対策を実施する態勢が整ったことから指定を解除しました。会議の中で、野田総理大臣は「住民の皆さんがふるさとに1日も早く、安心して帰ることができるよう解決すべき課題はいろいろある。避難されている皆さんが帰還に向けた不安を1日でも早く払拭(ふっしょく)できるよう、国が先頭に立ち、除染を進めるとともに、市町村の復旧計画の実現に向けて、政府一丸となって最大限の対応を行っていく」と述べました。3月11日に発生した原発事故では、「警戒区域」など3つの避難区域が指定されていますが、解除が決定されたのは今回の「緊急時避難準備区域」が初めてです。
緊急時避難準備区域が解除されたことを受けて、福島県の佐藤知事は、コメントを発表しました。この中で、佐藤知事は「解除は住民が故郷に帰還するための第一歩だ。しかし、帰還が実現するまでは解決しなければならない課題も多い」と述べています。そのうえで、「インフラの復旧や教育、それに医療の再構築について、市町村が策定した復旧計画を実現するために、県としてしっかりと支援していきたい」としています。
「緊急時避難準備区域」は、住むことは認められているものの原発の異常事態に備えて避難の準備をしておくことが求められている区域のことです。指定されているのは、いずれも福島県の南相馬市の一部、田村市の一部、広野町の全域、楢葉町の一部、それに川内村の一部の5つの自治体です。この区域では原発の異常事態が起きたときには自力で避難することが難しいとして、すべての小中学校と幼稚園、それに病院の一部や高齢者施設も閉鎖されています。そのうえ、商店や企業の閉鎖が相次ぎ、住民の半数に当たるおよそ2万8500人が区域外で避難生活を続けています。指定されている5つの自治体は解除の条件として政府から求められていたライフラインの復旧や放射性物質を取り除く除染の方針などを記した復旧計画を、今月、提出しました。各自治体の計画では、住民を戻す時期について、川内村と田村市が来年3月まで、広野町は来年いっぱい、南相馬市は具体的な時期を明記しておらず、いずれも除染に時間がかかることを理由に挙げています。一方、楢葉町は町のほとんどが「警戒区域」に指定されているため、今回の計画では住民は戻さないとしています。また、除染の計画については、いずれの自治体とも、学校や公共施設などを優先的に実施し、その後、住宅や通学路など地域全体の除染を進めたいとしています。しかし、除染で発生した放射性物質を含んだ土や汚泥などを一時的に保管する仮置き場については、いずれの自治体も具体的な場所を明記していません。保管する場所の確保ができなければ除染がどこまで進むのか不透明な状況です。さらに、年間の被ばく線量が5ミリシーベルト未満の地域について、政府は、現時点では、局所的に線量が高い一部を除いて財政支援を行わないとする方針を示していて、自治体からは除染を計画していた地域が財政支援の対象にならないおそれがあるとして反発する声が上がっています。また、住民の生活に欠かせない病院や介護施設では職員が不足しているうえ、放射性物質への不安から戻らないとしている企業も相次いでいます。このため地域医療の再生や雇用の確保など生活基盤の整備も求められていて、自治体にとって住民を戻すためには様々な課題が山積しています。