被災妊婦の出産支援
都内の病院・住居紹介 都助産師会など
古里と思って東京で出産を――。都助産師会などが、東日本大震災の被災地で出産をひかえた妊婦や出産直後の女性に、東京の病院や住居を紹介する取り組みを続けている。名付けて「東京里帰りプロジェクト」。これまでに67人が東京や被災地で支援を受けたが、同会では「周囲に相談相手がいなくて困っている妊産婦はまだいるはず」とさらなる利用を呼びかけている。(河村武志)
「皆さんのおかげで安心して産めました」。福島市から避難し、現在は武蔵野市の都営住宅で暮らす岡田めぐみさん(29)は笑顔をみせた。
妊娠15週目で被災。原発事故の影響が心配で3歳の長女と1歳の長男を連れ、3月下旬に府中市の知人宅に身を寄せた。4月半ばに携帯電話の画面に「東京 避難 妊婦」と打ち込んでネット検索し、同プロジェクトのサイトを見つけた。
思いきってメールで支援を申し込むと、都内の助産師から連絡が入り、相談に乗ってくれた。「病院だけでなく、上の子の保育園や子育て中のママを紹介してくれて助かった」。8月下旬に元気な女児を産んだ。
プロジェクトは、宗祥子(そうしょうこ)・都助産師会副会長が震災後、同業の仲間に「被災地の妊産婦を支援できないか」と呼びかけたのがきっかけ。震災から4日後には骨格が固まり、2週間後から動き出した。日本財団の助成金や寄付で運営しており、都内25の助産院が参加する。
都内に避難している妊婦には、自己負担なしで出産できる病院や住居を紹介し、定期的に助産師が自宅を訪問する。出産後の母子を約3週間、助産院に預かることもある。都内では被災地の妊婦13人が出産し、今も7人が出産を待つ。
また、被災地から連絡があっても、個々の事情で東京で出産できないケースがある。その際、現地の助産師と連絡を取ったり、出産後の女性におむつを郵送したりする。東京から助産師が出向いて相談に乗るなど、被災地にいる妊婦も支援している。
宗さんは、「安心して産み育てることができる環境をつくるのが私たちの使命です。東京を故郷だと思って産んでもらえたらうれしい」と話している。詳しい問い合わせは、平日午前10時から午後4時に同プロジェクト事務局(080・3915・9923)へ。
(2011年10月12日 読売新聞)