少しずつ少しずつ鉾が傾いて来たと思ったら、徐々に倒れる速度が上がり轟音。
一瞬のうちに真木は地面に叩きつけられてました。
居合わせた全ての人の時間が止まってました。
「えらいこっちゃ」
町衆の顔役の方とスタッフの長らしき方が御神体の菊慈童さんに駆け寄って皆の時間が動きました。
顔役の方は悲しそうに御神体の上にハンカチを広げ、周りから隠すように被せた光景を見て、私にもことの重大さが分かりました。
先程まで太陽の光に輝いていた菊の鉾頭の半分は潰れ、青地に金の菊水の額も、倒した鉾柱を支えるために置いておいた馬にちょうどぶつかってしまい壊れています。
よく見ると、肝心の真木も割れています。
プロというのは流石で、一度身体を動かし始めると粛々とやるべきことを片付けています。
しかし、気が付くと、周りにいた人たちもほとんど居なくなってしまったのが物悲しい…。
本当なら真木に飾られた榊を分けたりもしたのでしょう。
滅多に起こることのない事故なのでしょう。
しかし、考えようによっては、悪い厄は鉾が持っていってくれたのです。
菊水鉾の粽は毎年飾らせて頂いてますが、今年も飾ります。