今回は「想望」の破壊力に負けました。
今まではお涙頂戴の場面でも微妙に入り込めなくて、ちょっと醒めた感じで見てしまっていたのですが、昨日の以蔵と弥太郎の場面は参りました。
「舌を噛む力も残ってない…」
このセリフとバックの「想望」に、ちょっとジワッときてしまいました。
以蔵の毒まんじゅうのエピソードは、龍馬伝オリジナルだと思われます。
眉にツバを塗って見て下さい。
しかし、実際の半平太と以蔵の年齢差よりも、演じている俳優の年齢差が大きいのが良い作用を生んでいて、すんなり入り込めますね。
話はそれます。
龍馬伝では、歴史上の人物の年齢と俳優の年齢の差がかなりあります。
吉田東洋・山内容堂・松平春嶽・勝海舟などは、軒並み1.5倍ほどの年齢の俳優が演じています。
吉田東洋の暗殺された年齢は46歳!山内容堂なども今のドラマの時点では40歳にもなっていません。
しかし、年齢の高さが、今回は大きくストーリーに良い作用をもたらしているように思います。
話を以蔵に戻します。
岡田以蔵が刑死するのは、紀行でも紹介していましたが28歳。
佐藤健はもっと若く、大森南朋との年齢差が幸いして、狂信的に師匠を信じる考えることと苦手な青年を好演しています。
新しい岡田以蔵像を描き出すことに成功していると思います。
毒まんじゅう話も、半平太が以蔵を大切に思うあまりに食べさせようとしたという美談になっていますが、狼狽えながら毒まんじゅうを弥太郎に手渡す半平太と、弥太郎の様子を見て毒まんじゅうと悟り、それを師匠からの愛と受け止める以蔵では、あまりにも半平太が下げすぎで以蔵が上がりすぎ。
岡田以蔵は、土佐勤王党からの暗殺命令を受けて、京都で政敵(というか目障りな人物)を殺しまくったのは歴史的な事実です。
しかも、龍馬伝の以蔵と違って、殺し方も残虐、死体の扱い方も残虐。
土佐勤王党以外からも、金銭を受け取っての殺人を行ってもいたようで、はっきり言って殺人を楽しんでいたと思われる。
好意的に見て、コンプレックスからの殺人とか、幕末の世界では殺し合うのが当たり前とも言えるかもしれませんが、以蔵の殺人は、当時の人間の感覚からしても異常です。
漫画や龍馬伝の影響で好意的な見方が増えていますが、実在の以蔵は別物と思ってもらいたいものです。
今回は「西郷吉之助がバッサリ」「3年B組の卒業式」「毒まんじゅう」の3本立て。
今回より、高橋克実演じる西郷吉之助登場です。
さすが高橋克実さんはお上手で、なかなかの西郷ぶりです。
しかし、有名な「少し叩けば少し響き、大きく叩けば大きく響く…」は無さそうですね。
この面会のくだりは好きじゃないです。
女の話から蛤御門・長州征伐と、人をはめるような話の展開は小賢しく卑怯で、私にはあまりにも龍馬的には感じられない。
ドラマの中で、過去に龍馬にそのような人物描写があれば腑に落ちるのですが、ちょっと違う気がします。
ですから、龍馬が得意の「にっぽんじん!」と言ったときに、西郷が「あまりにも勝先生の塾生らしい」と、幕末の当時にあって「にっぽんじん」という発想の甘さと危険さを指摘してぶった切るのは痛快でした。
…そう思っても女の話は不要だったと。
海軍操練所閉校のくだりは、私は一度も「金八先生」のドラマを見たことがないのですが、ときどき見るワンシーンの金八的に見えました。
教師の役というのは、教師を知れば知るほど演じづらいのかもしれないと思います。
しかし、目を真っ赤にして泣く役者たちを見ると、金八の破壊力というのは恐ろしいものなのだと思います。
あと、私はボーイスカウトをやっていたときがあるので、あの国旗の扱い方は懐かしかったですね。
金八的でしたが、良いシーンでした。
そして毒まんじゅう。
弥太郎家と以蔵の牢獄に分かれていたこと。
弥太郎家の失笑してしまうドタバタと久々に見せた弥次郎の男。
牢獄での弥太郎と以蔵の対比など秀逸でした。
「わしはもう自分の力で舌を噛み切る力もないがじゃ」は、今後も含めて龍馬伝のベスト5に入る名シーンではないでしょうか。
あの場面を見てフッと思い出してしまったのが、「新選組!」での山南さんの切腹の回です。
それで思ったのが「惜しいな」。
龍馬伝では意図的にいくつかの場面を合わせて描いていますが、毎回3本立てではちょっと食傷気味。
去年の最低最悪脚本家が描いた「天地人」でも基本2本立てで構成していましたが、最近は40分1本勝負をする力がNHKには無いのですかね。
細かなところですが、小松帯刀は篤姫ファンにはガッカリかもしれませんが、なかなか良かったと思います。
あと、時代劇には珍しくタロット占いの場面がありました。
気になって調べてみると、「世界に出て行く」と言う暗示なんだそうです。
あれがあのままで終わりとは思えないので、どうなっていくのかも楽しみです。
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