今回の龍馬伝で一つ確信してしまいました。
下関戦争後に、あの有名な
「日本を今一度せんたくいたし申候」
という手紙を送っています。
これは、水戸黄門でいえば、ご老公が「私は越後の縮緬問屋」というくらいの決め台詞で、この台詞があることによって物語が大きく回転していくことになるわけです。
龍馬ファンにしてみれば、この台詞があって龍馬が飛躍をする、待ちに待っている台詞なのです。
ドラマの中では一年近く経ってしまいましたが、ここまで出番無し…。
今回の龍馬は、初めてあった女性に「母上と呼んでいいか」とか「龍馬と呼んでくれ」とかと妙なマザコンぶりを発揮したと思ったら、あとはひたすら「お龍。お龍」。
神戸に帰ったと思ったら、またも蛤御門の変で京都に直行。
一歩譲ってそれはアリとしても、京都の町でしたことは「お龍」。
どこまで行っても自分とその周りだけ。
そこで確信の話に戻るわけですが、この龍馬伝は、ドラマの中では「にっぽんじん!」「にっぽんこく!」などと威勢のいいことをいうときもありますが、意図的に龍馬を個人の枠から踏み出させていないのだろうと思いました。
そういう龍馬は第3部にとっておいているのかもしれません。
事実、この頃の龍馬は歴史の大きな流れの中では、ほんとうにちっぽけな存在でしたし。
前回の池田屋事件の描き方でもそうですが、脚本や演出が意図的に視聴者の期待を外してくるので、これも何かの意図があると信じたいのですが、あまりにも龍馬さんがちっぽけでちょっとイライラしてきています。
個人の延長上に天下国家があるということを描きたいのかもしれませんが、若者が分をわきまえずに大きな夢を語ることは悪いことじゃないと思う。
というか、地に足が着いていないからこそ、飛躍が生まれるんじゃないだろうか?
そこらへんも含めて、どうも龍馬伝の龍馬さんは地に足が着きすぎていて、夢を語らなすぎてスケール感が乏しく感じてしまいます。
さて、今回のストーリーですが、「母上」「毒まんじゅう」「お龍陥落」といったところでしょうか。(笑)
龍馬ものと言えば、寺田屋のお登勢さんは欠かせない存在ですが、龍馬伝ではあえて母親のお幸を演じた草刈民代さんを持ってきています。
お登勢さんは母親のような存在だったそうですが、直球ですね。
それにしても、吉田東洋を演じた田中泯さんもそうですが、バレエをやっていた方たちというのは、なんでこんなに芝居が上手なんでしょうか。
素人目にはしっかりと演じ分けがされていて、姿形は同じでも中身は別人と映りました。
あと、「母上」「龍馬」「全然違う」のくだりは、福山龍馬の真骨頂でしょう。
歴代の龍馬を演じた人を思い浮かべても、ああいうことがサラッとできてしまうのが福山龍馬ですね。
ちょっと気になったのが、寺田屋には実際に立ち寄っているのですが…、大き過ぎじゃないですか?
むちゃくちゃ天井も高いし。
ただ、江戸時代には淀川を使った交通というのが盛んで、それによって伏見も栄えていたというのがよく表現されていたと思います。
サラッとと言えば「うーみ」。
お佐奈さまは30分くらいで攻略してしまった龍馬ですが、さすがにボスキャラのお龍は3週かかっての攻略でしたね。(笑)
上目遣いに睨みつけるお龍が、はにかむような笑顔を見せるのはなかなかで、私は個人的には実在するお龍はあまり好きではないのですが、ちょっとこのお龍は「いいかも」と思ってしまいました。
重々しい場面が続く土佐ですが、先週はあれほどの「武士の一分」を見せた武市さんが、今週は元に戻ってギャーギャー騒ぐのはなんとも…。
ああいう描き方をして、誰が得をするのかも分からない。
一時期は、攘夷レースの先頭を突っ走っていた武市半平太とも思えない小物っぷりに戻ってしまいました。
捕らえられたあとの武市と以蔵の関係がどうなって武市切腹になっていくのかは、史実の中では不明なのですが、その理由として考えられているのの一つが「毒まんじゅう」なわけです。
以蔵はとても拷問に耐えられないだろうからと、こっそり毒まんじゅうを食わすが、以蔵は死なずに、武市を恨んで土佐勤王党の悪事をすべてを語るというのが定番ですね。
繰り返しますが、真実は闇の中です。
後に月形半平太のモデルともなったと言われる土佐藩の名物男ですから、死に至ったほとんどはシークレットなんですね。
ただなぁ、あんな卑屈な武市の状態で「毒まんじゅう」が出ちゃったら、ひたすら女々しいだけでしょう。
黒武市がなつかしい…。
最近、容堂公の壊れっぷりも凄いんですけど。
今回の飲酒場面で、手に持つお猪口はたぶん江戸切子、お銚子は薩摩切子ではないのかと思うのですが、あれは、幕府に付くか朝廷に付くかで悩んでいる暗示なんでしょうか?
いよいよ繰練所が無くなって、龍馬さんも薩摩に擦り寄っての独り立ちとなるわけですが、ファンの方には申し訳ありませんが武市さんと以蔵さんは、これ以上見せ場も無いでしょうから、早い段階での退場をお願いしたいです。