今回は、見終わったあと、複雑でした。
大河ドラマを“ある程度”史実に準ずるものとして見るのと、ドラマとして見るのと、人によって見方はさまざまだと思います。
私は、もちろんドラマとして見ているわけですが、あまり史実からかけ離れて欲しくないとも思っています。
大河ドラマを史実と思う人も多いほどの歴史があるので、それぞれの人物を丁寧に扱って欲しいと思っています。
(そういう点で、去年の「天地人」はデタラメすぎて、私は大河と呼ぶに値しないと思う)
今回は、すべてが「捏造」と言って差し支えない。
いや、正確にはこの時期の龍馬の消息は不明な部分の多い時期なので、全く無いとは言えないのかもしれませんが、時系列や人物関係を見ても無茶なストーリーです。
今更のごとく「ワシは土佐に帰るきに!」「武市さんと以蔵が死んでしまうがじゃ!」とか言われても、正直「またかよ…」って気分で、開始15分でウンザリしてしてしまいました。
すべては、当初の予定が7月11日が参議院議員選挙の開票と龍馬伝第3部がかち合ってしまうことを避けるために、第2部を今回の1話増やしたのが諸悪の根源。
先週の大量な回想シーンも、1話増やした水増しが原因だと思っています。
ところで、何度か第28回を見ていて思いだしたのが、フジテレビ系列の「大奥」の第9話の怪談編です。
最初の放送時には、なんでストーリーを切ってこんな回を差し挟むのかと、違和感が有りまくりでした。
ところが、次作「第1章」、次々作「華の乱」と、ジワジワとこの第9話が効いてくるんですね。
ここで史実をねじ曲げてしまうのなら、この第28話が今後のスパイスとなるような作りであって欲しいとつくづく願っています。
そういう点では、まだプロデューサーにも脚本家にも、去年のように絶望はしていない。
しかし、坂本龍馬というフィルターを外してみると、とくに福山龍馬が久しぶりに光った回ではないかと思います。
とくに、後藤象二郎との「大芝居」のシーンは、半年間龍馬を演じ続けた福山龍馬の大きな成長を感じられた場面でした。
下衆な振りをしつつも、品の良さをと荒々しさを同居させた演技というのは難しかったと思います。
また、龍馬は剣の達人という設定なので、新選組のときもそうでしたが、立ち位置や間合いの取り方で緊迫感が出ていたのではないでしょうか。
しかも、最後は握り潰してますからね。(笑)
そりゃ、象二郎も泡を吹いて苦しむでしょうよ。
そういうことをしつつも、早速旅支度を整えて、溝渕さんや弥太郎には丁寧に感謝しつつ逃げる。
福山龍馬らしくもあり、一皮剥けた龍馬像でもあったと感じました。
ただねぇ・・・。
今回は、「少し叩けば少し響き、大きく叩けば大きく響き…」、次回は「日本を今一度洗濯いたし申し候」などの名ゼリフが出てくるようですが、意図的にわざと違う場面で使うのは卑怯です。
来週出てくる「日本を今一度洗濯いたし申し候」などは、その前に「姦吏を打ち殺して」という言葉がついています。
平べったく言えば、「幕府の役人をぶっ殺して・・・」と言っているわけです。
その背景には、長州藩が攘夷実行を行った結果として傷ついた外国の船を、幕府が金を出して修理してやり、その船がまた長州を攻撃しに行っているという現状に龍馬は憤った結果としての言葉なのです。
日本を滅ぼす手助けを幕府がしているわけですから、おかしいと感じたのでしょう。
そういう背景を無視して、龍馬の言った有名なセリフだから、第3部への景気づけなどで使うのでしたら、NHKや脚本家の頭の中を先に洗濯すべきです。