保安院、中電にやらせ質問要請…社員に強制せず
中部電力は29日、2007年8月に、国主催で静岡県御前崎市で開催された浜岡原子力発電所のプルサーマル計画に関するシンポジウムで、質問がプルサーマル反対派一色になるのを避けようと、経済産業省原子力安全・保安院の依頼を受け、同社社員や関連企業などに参加を呼びかけたとの内部調査結果をまとめ、同省に報告した。
同社は「社員らに特定の意見表明の強制はしなかった」と、やらせ質問の要請は断ったとしているが、原子力規制側の保安院が、推進側の世論誘導にかかわっていたことを示すもので、今後、論議を呼びそうだ。
調査は、九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働を巡る「やらせメール」問題を受け、同省が29日までに各電力に回答を求めていたもの。中部電力の発表によると、8月26日のシンポの前に保安院から、〈1〉会場の空席が目立たないように参加者を集める〈2〉質問が反対派のみにならないよう質問を作成し、地元の人に質問してもらう――との口頭依頼があった。同社は、社員、関連企業、地元に参加を呼びかけたものの「任意の呼びかけで参加人数の割り当てや参加報告などの強制的な方法はとっていない」とした。
シンポは、保安院や資源エネルギー庁などが企画し、プルサーマル発電の安全性が説明された。同社によると、参加者は524人で、このうち同社社員は150人前後だった。関連企業の参加者は把握していないという。シンポではプルサーマルの必要性などに関するアンケートを実施。「理解できた」「だいたい理解できた」との肯定的な回答が8割を占めたが、同社本店で記者会見した寺田修一法務部長は、「参加の呼びかけは空席が目立つと良くないとの目的が大きい。アンケートをよく見せようという意図はない」と述べた。
シンポに、当時原子力発電安全審査課長として出席し、記者会見でスポークスマンを務める保安院の森山善範・原子力災害対策監は「(保安院からの依頼は)記憶していない。あってはならないこと」と話した。
(2011年7月29日14時02分 読売新聞)