放射性廃棄物、英から震災後初の受け入れへ-処理施設の綱渡り続く
8月16日(ブルームバーグ):英国から放射性廃棄物が来月、核燃料再処理工場がある青森県上北郡六ヶ所村に運び込まれる。東京電力福島第一原発で事故が起きて以降、高レベル放射性廃棄物の受け入れは初となるが、国内の処理施設は増え続ける廃棄物により数年内に満杯になる可能性もある。
今回運び込まれるのは、英国で使用済み核燃料を再処理する際に発生した高レベル放射性廃棄物30トン以上。運搬船は同国を3日に出航し、青森県のむつ小川原港に来月初旬に到着する予定だ。
六ヶ所村で貯蔵している放射性廃棄物は使用済み核燃料と、再処理によりウランとプルトニウムを抽出した後の高レベル放射性廃棄物。日本原燃広報担当の館花浩丈氏によると、使用済み核燃料については、貯蔵可能な3000トン(ウラン)に対し2834トンまで積み上がっている。
高レベル放射性廃棄物については、専用容器で最大5880個の貯蔵能力があるが、このうち2300個余りは既に貯蔵されている分と確定している分で占められる。カリフォルニア大学バークレー校原子力工学部のアン・ジュンホン教授によると、使用済み核燃料1トンで容器1個分としており、事故前に54基の原発から年間1000トンの使用済み核燃料が発生していたことからすると、計算上はあと4年分以下のスペースしかない。
アルスター大学生物医学部客員教授のクリス・バスビー氏は「受け入れ可能な解決策のない非常に大きな問題だ。放射性廃棄物は毎年増える」と指摘した。
脱原発を唱える自民党の河野太郎衆院議員は9日、都内での記者会見で国内の原発から毎年1000トンの使用済み燃料が発生するため各原発に備わる燃料プールも7年でいっぱいになると指摘した。河野氏は12年後には使用済み燃料を貯蔵する場所がなくなるため、その時点で原発は閉鎖を余儀なくされるのではないかと述べた。
東電は青森県むつ市に使用済み核燃料の中間貯蔵施設を建設し、5年分5000トンの貯蔵スペースを確保する予定だった。しかし、福島第一原発事故以後、建設は中断されている。
最終処分地
放射性廃棄物の処理については米国も問題を抱えている。オバマ大統領は2009年、ネバダ州ユッカマウンテンに建設する予定だった放射性廃棄物の最終処分施設を地元住民らの反対で断念した。同施設の建設には20年の歳月と100億ドルが費やされていた。
六ヶ所村は放射性廃棄物の最終的な貯蔵場所ですらない。核燃料再処理工場などに約3兆円の資金が投入され、740ヘクタールの敷地に2450人の従業員が働く。相次ぐトラブルで再処理工場の操業延期は18回に及んでいる。
原子力発電環境整備機構広報担当の赤司友一郎氏は「2040年代後半までに操業する予定だが、工期は厳しい状況になっている」と述べた。核廃棄物の最終処分地が見つかる可能性について、赤司氏は「今の原子力情勢からいうと少し厳しいと言えるが、最終処分は必ず必要なものなので粛々と進めていきたい」と述べた。
核燃料サイクル見直し
核燃料サイクル政策について、菅直人首相は8日の衆院予算委員会で使用済み核燃料の再処理、運転停止中の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を含めて見直す方針を示した。
米国の「憂慮する科学者連合」の上級研究者エドウィン・ライマン氏は電子メールで「日本の核燃料サイクルは安全性、経済的な観点から意味をなさない。福島以後は一層意味がない」と述べた。
更新日時: 2011/08/16 09:16 JST