東電、5717億円の最終赤字で料金値上げ不可避
2011.8.9 20:05
東京電力が9日発表した平成23年4~6月期連結決算は、福島第1原発事故の賠償費用や収束の復旧費など5032億円の特別損失を計上し、四半期ベースで過去最悪の5717億円の最終赤字となった。原発停止に伴う代替火力発電用の燃料調達費も大幅に増え、経常損益も627億円の赤字となった。
長期分割で支払う賠償金の原資を捻出するには、経常利益をきちんと出していくことが必要で、赤字解消のため、料金の値上げが避けられない状況となった。また、特別損失の計上が続けば、自己資本を食いつぶして債務超過に転落する恐れがあり、公的資金による資本注入も焦点となる。
特損のうち3977億円を計上した賠償費用は、政府の原子力損害賠償紛争審査会の策定した中間指針に従い見積もった。内訳は、(1)精神的損害882億円(2)就労損害1413億円(3)営業損害1012億円(4)出荷制限に669億円。また原発事故の復旧費用として693億円を計上した。
電力販売は、供給力の低下と節電効果で低迷し、売上高は前年同期比7・2%減の1兆1331億円となった。一方で、石油や天然ガスなど代替燃料の調達費は、価格高騰の影響もあり大幅に増え、経常損益は、前年同期の494億円の黒字から1千億円以上悪化し赤字となった。6千億円以上を目指す資産売却は、ウラン会社からの出資引き揚げなど115億円にとどまった。
東電は前期の23年3月期決算ですでに1兆2473億円の最終赤字を計上しており、同期末の自己資本は1兆5581億円まで減少。さらに4~6月期の赤字計上で、1兆94億円に目減りした。
記者会見した西沢俊夫社長は、料金値上げについて、「言及を控える」とした。「まず合理化徹底に全力を尽くす」とも述べたが、値上げをしないと利益は出ず、賠償資金も支払えない状況だ。「債務超過にはならない」との見通しも示したが、最終的な賠償費や復旧費は見通せない状況だ。債務超過を回避するため、政府と電力会社で設立する原子力損害賠償支援機構からの資本注入を迫られる可能性もある。