福島の線量横ばい 福島大が市内計測 2年後も現在の6割
福島県内で福島第1原発事故による放射性物質の汚染レベルが、なかなか低下しない。放射線量は事故後1カ月程度でかなり減少したが、その後は微減が続く。現在の放射性物質の中心は半減期が年単位の2種類の放射性セシウムで、半減期がより長いセシウム137の割合がほぼ半分を占める。そのため専門家は大規模な除染などを行わない限り、線量は2年後でも現在の6割程度にしか落ちないと推測する。
福島市(原発から北西約65キロ)と南相馬市(北約25キロ)、飯舘村(北西約40キロ)の放射線量の推移=グラフ=を見ると、事故直後の3月中旬に最大になってから、半減期が8日と短いヨウ素131が減って急速に低下。4月下旬以降は減少ペースがかなり落ちた。
福島市では3月15日に毎時24.0マイクロシーベルトを記録。5月上旬には1.5マイクロシーベルト前後に下がった。その後の減少幅は小さく、5カ月過ぎた8月に入っても1.1マイクロシーベルト前後にとどまる。
福島大の放射線計測チームが4月、福島市内の土壌を分析して放射性セシウムの種類や量を調べた結果、セシウム134と137の放射線量は同程度だったという。いずれもセシウムの放射性同位体で、半減期は134が2年、137は30年と15倍もの開きがある。
計測チームがそれぞれの量と半減期のデータなどから計算した結果では、雨の影響などを考慮しなければ、福島市の線量は2年後でも現在の6割程度になるだけ。セシウム134は半分になるが、137の方はほとんど減らないからだ。
計測チームによると、セシウム134と137の比率は福島市以外でも同程度とみられ、今後の減少ペースは南相馬市や飯舘村などでも同じ傾向になりそうという。
福島市内で毎時1マイクロシーベルトが1年間続いた場合、屋外で毎日8時間過ごすなどと仮定して年間積算量は5ミリシーベルト程度。国際放射線防護委員会(ICRP)が「非常事態」収束後の一般人の年間被ばく限度量とした20ミリシーベルトは下回るが、通常時の一般人の年間限度1ミリシーベルトは超える。
福島大放射線計測チームの山口克彦共生システム理工学類教授(物理学)は「線量低減のためには除染を徹底するしかないが、住宅の屋根や放射性物質が固着したアスファルトなど簡単に除去できない場所も多く、大変な作業になるだろう」と指摘している。
2011年08月19日金曜日