支援のカタチ 東日本大震災から半年<5> 川崎市の模索 廃棄物処理に二の足
2011年9月17日
川崎市川崎区にあるごみ焼却施設、浮島処理センター。敷地の一角に、焼却灰を詰めた袋が積まれている。
「雨水が染み込まないように袋は二重。台を敷いてあるので土に触れません」と担当者。四月以降、市内四カ所の焼却施設から出た約千トンの灰が集められた。市の検査で、放射性セシウムが最大一キログラム当たり二六〇〇ベクレル検出。国が埋め立て可能な基準とした同八〇〇〇ベクレルを下回るが、念のため一時保管している。
阿部孝夫市長は四月、被災地の廃棄物処理に協力すると表明した。受け入れた場合、同センターで燃やすことになるが、まだ実現のめどは立っていない。
市長の考えに対し、「放射能で汚染されたごみを持ち込むな」などと抗議する電話やメールが殺到した。宮前区の主婦(62)は「助けたいという思いは大切だが、行政は汚染拡大を食い止めることを第一に考えるべきだ」と手厳しい。
市は北部で出た可燃ごみの一部をJR貨物の線路で臨海部に運び、同センターで処分している。阪神大震災(一九九五年)と新潟県中越沖地震(二〇〇七年)で廃棄物を引き取った際も貨物線を使った。鉄路を利用してごみを処理した実績を生かした支援だったが、今回は事情が違った。
国は先月、岩手県内でサンプル抽出した廃棄物の焼却灰中の放射能濃度が基準を下回ったとする調査結果を公表した。安全性に一定の評価を与えたが、市環境局処理計画課は「まだ膠着(こうちゃく)状態。検査態勢を整え、安全性を二重三重にチェックしなければ、市民の理解は得られない」と慎重姿勢を崩さない。
一方で、実を結んだ支援もある。
「一家で県外に避難している。投票するにはどうすればいいのか」-。
岩手県陸前高田市で、十一日投開票の知事、県議、市議選の選挙事務を支援した川崎市選挙管理委員会選挙課の渋谷光俊さん(42)は、選挙前、有権者の市民からの問い合わせに対応しながら、決意を新たにした。「切ない事情の期日前投票。無駄にしてはならない」。避難先の選管で投票できる制度を丁寧に説明した。
川崎市選管の職員は六月下旬からローテーションで陸前高田市に入り、選挙事務を支えてきた。
「津波で、選挙を知る市職員が亡くなった。システムを請け負う現地の業者も流され、分かる人がいない」
「被災地支援は重要。スペシャリストを送る」(小島勇人選管事務局長)という支援は、片山善博・前総務相が参院の特別委員会で被災地支援の好例として紹介したほどだった。陸前高田市の伊藤芳光選挙係長は「川崎市の応援がなければ選挙の実施は不可能だった」と振り返った。 (山本哲正、栗原淳)
被災地の瓦礫処理については全国で請け負うという方針を政府は打ち出しています。
しかし、時間が経ってみれば、自分のところの汚泥や焼却灰でさえもが処理をできない状態です。
原発事故というのは、今までの震災支援とは異なることを覚悟すべきです。
政府は、放射能に汚染された瓦礫処理については高額な補助金を出すそうですが、下手に引き受けると長期間の厳重な保存を強いられるわけです。
現実問題として、ムリなものはムリ。
福島の支援は、他の形の支援を考えましょう。