「コメ、東電が買い上げてほしい」嘆く基準超え農家
2011年9月24日21時40分
収穫前の予備検査で基準を超す放射性セシウムが検出されたコメを生産した福島県二本松市の農家の男性(56)が24日、取材に応じ「なぜこんな高い数値が出たのか分からない」と話し「東京電力にすべて買い上げてほしい」と訴えた。
同市の旧小浜町地区にある男性の田で採取したひとめぼれから、県による予備検査で基準(1キロあたり200ベクレル)を上回る500ベクレルが検出された。
男性によると、コメは山あいの棚田で作り、山のわき水を使っていた。棚田は祖父の代から耕作してきた。男性は「放射能が消えるまで何十年もかかる」と嘆いた。専門家からは、土でなく砂が多い田んぼのため高い値が出た可能性がある、と説明されたという。本検査で500ベクレル以下なら出荷ができるが、男性は「消費者は買ってくれるだろうか」と心配する。
今回の結果を受け、県と二本松市は24日、地元の集荷業者らを集め、緊急会議を開いた。三保恵一市長は「原発事故が原因で大きな憤りを感じる。(本検査で基準値を超えれば)国、県にすべての買い上げを求めていく」と述べた。
県は、二本松市内の5地区で追加の予備検査を実施し、いずれも基準値を下回ったと24日発表した。旧小浜町地区と地形が似ている地区を選んだという。
同県の予備検査は対象の全48市町村で終了。本検査で重点調査区域となるのは現時点で二本松市だけだが、県は今後も追加の予備検査をしていくという。(曽田幹東、有吉由香)
東日本大震災:福島・二本松産米セシウム検出 コメ農家「収穫も出荷もしない」
◇無念さにじませ
福島県二本松市産の新米予備検査で国の暫定規制値と同じ1キロ当たり500ベクレルの放射性セシウムが検出された問題で、生産農家の男性(56)が24日、毎日新聞の取材に応じ、本検査の結果にかかわらず、「周囲に迷惑をかけるから出荷はしない」と話した。「何も悪いことはしてないのに。初めから作らないほうがよかった」と無念さをにじませた。【山田毅】
男性の水田は同市小浜地区の山間部にある。稲穂をつけた田んぼが広がり、遠くには磐梯山を望む静かな農村地帯だ。
祖父の代に山を買って、田んぼを切り開いた。16歳のころから農業を手伝い始め、すでに40年がたつ。大工のかたわらに農薬などを極力使わない安全なコメの生産に努めてきた。予備検査の結果を知らされたのは23日夕。県の4月の調査で近くの土壌から1キロ当たり4600ベクレルを超える値が検出されていた。「ある程度高い値が出ることは予想していたが、500という値にはびっくりした」という。
作付けにあたっては、市から「大丈夫」との連絡をもらっていた。「手間ひまと肥料などの経費は無駄になった」と、今年の収穫も出荷も断念した。
「本検査で400になっても、消費者は安全と思わない。生産者の責任でうちのコメは絶対出荷しない。ほかの安全な福島県のコメに迷惑をかけるから」。7頭の肉牛も飼育しているが、稲が収穫できなければ、餌の稲わらも用意できない。今後の飼育もあきらめるつもりだ。
同居する次女夫婦に7月、初孫が誕生した。外の物干しに干された孫の服を指さして「本当は外に干すのも心配。原発から遠いはずなのに、理由は分からないけど線量は高いんだ。でも避難の指示や特別な補償もない地域。いったいどうしろというんだろうか」とつぶやいた。
生活基盤を奪われようとしている現状に「東電は生きていくための最低限の補償をすみやかにしてほしい」と訴えた。
毎日新聞 2011年9月25日 東京朝刊
こういう人ほど、しっかりと補償して欲しい。
この人を守らないと、農家は生きるために汚染米を流通させる人も出てきてしまうだろう。
実際に、1000Bq以上の汚染牛は腹に入って消化して、セシウムが出てきてしまったくらいになってから汚染が発表されたりしている。
3・4月の頃には、2000Bq以上の数値が出ている野菜でも、知らん顔をして売り捌いた人も居るそうです。
「ただちに…」
この言葉は、日本政府の愚かな政策の象徴として、今年の流行語大賞にして欲しいくらいですが、この時期にきてつくづくと恐ろしい言葉だと痛感する。
「ただちに」健康に被害が出ないから、売れてしまうし、食えてしまう。
日本の食を守るために、ともかく守らないとダメだ。