経年劣化原発は廃炉へ 新規立地・建て替え進まず2049年に原発ゼロも
2011.9.5 23:02
野田佳彦新政権は、東京電力福島第1原発事故を受けた今後の原子力政策について、「経年劣化」によって老朽化した原発を順次廃炉としていく方針を打ち出している。野田首相は、原発新設についても、「現実的に困難」との立場だ。稼働中の原発を寿命とされる40年で廃炉にし、建設計画をすべて中止すると、2049(平成61)年には国内の原発はゼロになる。原発ゼロでエネルギー需要を賄えるのか。原発技術も放棄してしまうのか。「リプレース」と呼ばれる建て替えも含め、大局的な議論が欠かせない。
国内では、平成21年12月に運転を開始した北海道電力泊原発3号機以降、新しい原発はできていない。
事故以前の電力各社は、新規立地の同意取り付けが難作業であることから、既存の原発を最大限活用し、段階的に新規原発に切り替えていく考えだった。
その切り札が、40年を超えても運転を継続できるようにする「長寿命化」の取り組みだ。保守点検作業の見直しなどで最長60年の運転を目指し、国の認可を受け、地元了解も取り付けてきた。昨年3月に日本原電敦賀原発1号機で6年間の運転延長が認められたのを皮切りに、関西電力美浜原発1号機、東電福島第1原発1号機では10年延長が認可された。震災後の7月には、関電が美浜原発2号機の延長を申請している。
だが、原発事故では、その1号機が最初に深刻な状況に陥り、危機が連鎖していった。定期検査で停止した原発の再稼働問題でも、地元には老朽化原発への不安が強い。政府は今後、廃炉の基準を定める方針を打ち出しており、延長の見直しは避けられない。
新規立地も厳しい。すでに着工し建設中の原発は、中国電力島根原発3号機のほか、青森県の電源開発大間原発、東京電力東通原発1号機の3カ所。しかし、大間と東通は震災後に「地元感情」などを考慮し、工事を中断。島根原発3号機は、今年12月の運転開始を予定しているが、震災前に一部不具合が見つかったこともあり、稼働の見通しは立たない状況だ。
政府は「2030年までに14基の新設を目指す」としたエネルギー基本計画を白紙から見直すことにしており、着工前の計画は撤回を余儀なくされる可能性が高い。
新規立地よりもハードルは低いとみられるリプレースの扱いも不透明だ。関電は事故前の段階で、美浜1、2号機の建て替え計画を今秋にも打ち出す方針だった。将来の原発ゼロを回避するには、リプレースを進めていくことが必要だが、電力業界では「新設と同様の扱いとなり、認められない恐れがある」との不安が出ている。