もんじゅ:試験運転先送り、国の対応に不信感 「地元置き去り」憤りの声 /福井
文部科学省が県や敦賀市に伝えた高速増殖原型炉「もんじゅ」の試験運転の先送り。県内では、地元置き去りの国の対応に憤りの声が上がった。
運転再開に反対してきた市民団体「原子力発電に反対する福井県民会議」の小木曽美和子事務局長はナトリウム漏れ事故(95年)や機器の一部の炉内落下トラブル(10年)を挙げ、「国は悪あがきをやめるべきだ。安全である訳がない」と痛烈に批判。維持費に計約200億円が必要なため、「増税に理解を求める一方で、使い物にならないもんじゅに膨大な予算を投じるのは、国民をなめきっている」と主張した。
もんじゅ行政訴訟の原告だった敦賀市の吉村清さんも「地元はそっちのけにして、再開ありきで結論を先延ばしにしているのでは」と不安を語り、「賛成派は目の前の金に釣られているだけ。すぐにでも廃炉にするべきだ」と改めて主張した。
これまでもんじゅを推進したり安全対策にかかわってきた人たちも国の対応に不信感を示した。地元・敦賀市白木地区の元区長、橋本昭三さんは「地元に相談なく、頭ごなしに方向転換をするのか」とため息をつく。「脱原発が実現したら雇用は激減する。福島原発事故での東京電力や政府の責任に言及せず、地方にすべてをかぶせるのか」と憤った。
元県原子力安全対策課長で、若狭湾エネルギー研究センターの来馬克美・専務理事は「安全性を議論するならまだしも、原子力政策大綱の結果を待つということは国が推し進めてきた政策を変えるということか。理解に苦しむ」とあきれていた。
一方、文科省の藤木完治・研究開発局長から説明を受けた西川一誠知事は「福島の事故を踏まえ、もんじゅについて、どういう安全対策ができるのか、わかりやすく示されることが重要だ。炉内中継装置が落下した問題も、適切に対応してほしい。その上で、もんじゅのこれからの将来性をどうするかだと思っている」と述べた。【安藤大介、柳楽未来、古屋敷尚子】
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■解説
◇維持管理費に200億円 ナトリウムを扱う危険性も
高速増殖原型炉「もんじゅ」の試験運転が、今年度は見送られることになった。だが、完全な停止ではなく、ナトリウムの循環など維持管理費に年間約200億円をつぎ込み、ナトリウムを扱う危険もつきまとっている。
1980~2011年度のもんじゅの総事業費は9481億円に上る。試験運転を先送りして運転停止した状態でも、配管を流れるナトリウムが固まらないよう200度以上に保つ必要があり、維持費がかかる。震災で財源が厳しい国にとって大きな負担だ。
もんじゅは、空気や水に触れると激しく燃焼するナトリウムを使う。シビアアクシデント(過酷事故)を懸念する声は根強く、京都大原子炉実験所の元助手、小林圭二さんは「福島で想定外の事故が起きた以上、原子炉を冷やすナトリウムの配管3ループ(系統)が、いずれも破断するような事故が起こらないとは言えない」と警鐘を鳴らす。
今月から、国の原子力政策の基本方針となる「原子力政策大綱」の改定作業が始まった。福島原発の事故で原子力政策への不信感が高まる今こそ、もんじゅや高速増殖炉開発の将来について、真剣な議論が急務となっている。【安藤大介】
毎日新聞 2011年10月1日 地方版
もんじゅは、ラスボスの六ヶ所の前の強敵。
こいつを叩き潰せば、核のリサイクルというお題目も吹っ飛ぶ。
使用済み核燃料を再利用するために六ヶ所を動かせば、その周辺は激しく汚染され、長い未来に三陸の漁場が健全さを取り戻したとしても、再びジワジワと汚染することになるでしょう。
もんじゅを許すか、許さないか、という議論は、日本の原子力発電の有無を問う問題です。