セシウム分布まだら模様 関東でも局地的に蓄積
2011/10/16 23:38
東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、文部科学省は小型飛行機などで放射性セシウムの地上への沈着量を測定している。東北―関東地方の汚染マップができ、放射性物質が原発から約250キロ離れた首都圏にも広がっている様子が浮かび上がった。局地的に放射線量の高い「ホットスポット」の詳しい分布も分かってきた。
測定は小型飛行機やヘリコプターに検出器を積み、150~300メートルの上空を飛んで実施。放射線量のデータから、地表のセシウム沈着量を計算している。地上でも実際に土壌を採取して濃度を調べ、測定値を補正している。場所のずれは300~600メートルあるが、おおよその汚染の広がり方を把握できる。
福島第1原発から放出されたセシウムは雲のような固まり(プルーム)となり、風で運ばれ、雨が降った場所で地面に落ちると考えられている。放出濃度と地域ごとの風向き、降水量の変化が複雑に絡み、セシウムの分布はまだら模様だ。
福島県の計画的避難区域などに深刻な汚染をもたらしたのは、3月15日に放出されたプルームとみられる。国立環境研究所は風向きや降雨を考慮して拡散を計算。「15日のプルームは福島県から栃木県、群馬県へ流れ、さらに埼玉県や東京の西部に達した」(森野悠研究員)と推定する。汚染地図ではシミュレーション通り、セシウムの沈着が帯状に広がっている。
■東京西部で高く
東京・奥多摩町の北部にはセシウムの濃度が1平方メートルあたり6万ベクレルを超える場所があると判明。都の最西端にもかかわらず都内で濃度が最も高かった。この場所の放射線量は毎時0.2~0.5マイクロ(マイクロは100万分の1)シーベルト。直接の原因は明らかになっていない。
文科省によれば、毎時0.2マイクロシーベルトを超える場所では年間の被曝(ひばく)線量が一般人の限度である1ミリシーベルトを超えるおそれがある。ただ避難の目安となる年間20ミリシーベルトには及ばない。
一方、千葉県柏市や茨城県土浦市付近にも、セシウム濃度が高い地域がある。21日に放出されたプルームが原因とされる。原発から南下したプルームはいったん太平洋上に流れた後、風向きの変化で茨城県南部と千葉県北部を通過。その際に雨が降り、セシウムが地表に落ちたとみられる。
■市民調査で判明
1986年のチェルノブイリ原発事故では、セシウム137が1平方メートルあたり3万7000ベクレル以上の地域が「汚染地域」に指定された。文科省の汚染地図によると、福島の東半分のほか、群馬と栃木の北部、東京・奥多摩町や千葉県柏市、茨城県土浦市周辺の一部が同水準の濃度。一方、チェルノブイリの強制移住の基準はセシウム137が同55万5000ベクレル以上。これに相当するのは福島県の原発近辺と浪江町、飯舘村などに限られる。
航空機の測定からは分からない、より局地性の高いホットスポットの存在も明らかになってきた。自治体や市民の調査により、首都圏でも公園や住宅地などで周辺より放射線量が高い地点が見つかっている。
神戸大学の山内知也教授は「雨水が集まりやすい側溝などでは雨で流されたセシウムが蓄積し、周辺の10倍程度の線量になることもある」と指摘する。木が多い場所では葉に付いたセシウムが雨で落ちたり、落ち葉とともに地上に蓄積したりする可能性もあるという。(柏原康宏)
この文科省の汚染マップについては、東京・神奈川の値が信用できないのは何度か書きました。
しかし、恐ろしいのが、セシウムが含まれている食品が当たり前に流通していること。
長野・山梨の発表に時間がかかっているのが気にかかります。