“水源”群馬と奥多摩の深刻なセシウム汚染で東京の水道水がヤバい
[2011年10月19日]
再び東京で“水道水パニック”が起こる? 文部科学省が発表した「福島第一原発事故で放出された放射性セシウムの土壌蓄積量」の航空機モニタリング測定結果が波紋を呼んでいる。
この測定マップを見ると、汚染が東日本全域に広がっていることは明らか。しかも、これまで認知されていなかった場所が高線量であることがわかる。例えば、東京都では葛飾区や江戸川区がホットスポットとして有名だったが、今回の測定結果を見ると西部の奥多摩地域でも汚染が見られる。
なかでもセシウムの沈着量が多い奥多摩町北部の汚染は1㎡当たり10万~30万ベクレル。これを人体が受ける放射線量に換算すると、毎時約10~30マイクロシーベルト以上。チェルノブイリ原発事故後の管理区域値(5.0以上)をはるかに上回る値だ。
今回の文科省の発表について、放射能汚染を研究するタイ国立大学講師・小川進博士(工学・農学・気象学)はこう説明する。
「奥多摩の汚染が驚きをもって受け止められていますが、これは以前から指摘されていたこと。例えば3月下旬、東京都内の水道水から乳幼児向けの飲用基準の約2倍に当たる放射性物質が検出され、都は緊急に乳幼児に向けてミネラルウオーターを配りました。このとき問題ありとされたのが、主に栃木県と群馬県中部の山間部から流れる利根川水系で、そこから取水する金町(かなまち)浄水場からヨウ素が検出されました。そのとき、多摩川水系の水源も汚染されているのではないかといわれたのですが、都水道局は放射性物質が混じった利根川水系の水が水路を通って多摩川水系にも流れたからだという説明に終始しました。しかし、今回の測定結果を見ると、秩父山系と奥多摩、群馬南西部を水源域とする多摩川水系の浄水場にも放射性物質は流れ込んでいたと考えざるを得ません」
実は本誌取材班も、以前からこの東京都の水源と放射性物質の関係は怪しいとにらんでいた。6月下旬から7月初めに東京都が100ヵ所で実施した放射線量調査の再検証取材で、奥多摩湖周辺から異常に高い線量値が出ていたのだ。その測定取材を担当したジャーナリストの有賀訓(さとし)氏が語る。
「なぜか奥多摩湖は都の計測ポイントには含まれていなかったのですが、気になって測ってみると、湖畔のあちこちで奥多摩町、檜原(ひのはら)村、日の出町など東京西部地域の平均線量の倍以上に当たる0.2オーバーの数値が出た。ただし、それは6月末の数値。放射性物質を吸収して育った木の葉が地面に落ちた今は、もっと濃縮されて高くなっているはず。また、文科省の調査が行なわれたのは9月14~18日。その後、大型台風15号が上陸し、山林にたまっていた放射性微粒子が一挙に奥多摩湖へ流れ込んでいるでしょうから、奥多摩は調査時よりも、より危険な状態になっている恐れがあります」
さらに、文科省発表の測定マップを見ると、奥多摩だけでなく、もともと危険視されてきた利根川水系の源である群馬県の深刻な汚染も確認できる。
「群馬の川場村やみなかみ町などはホットスポットとして知られていましたが、このあたりは奥多摩の最高値である1㎡当たり最大30万ベクレルの地域が、奥多摩より広い範囲にわたっていることがわかります」(有賀氏)
そんな水源を利用する東京の水道水は大丈夫なのか? これまで都水道局は放射性物質は「不検出」と発表しているが……。
「今は汚染が土壌にとどまっているので、まだ水道水の数値には現れないのでしょう。しかし、セシウムはいったん水に混じると溶けやすい性質を持っています。土壌深くに浸透したり、風雨によって川に流れ込んだら、また水道水の汚染度は高まるに違いありません。浄水器をつけたとしても分子サイズの物質しか除去できず、さらに小さい元素であるセシウムは吸着しない。セシウムが水道水に溶け出したら、個人でできる対策は水道を使わないことしかないのです」(前出・小川氏)
水道水パニックは、前回以上の規模で起こるのかもしれない。