白馬村の宿泊業者ら、今冬の外国人離れ懸念
10月29日(土)
東京電力福島第1原発の放射能漏れ事故を機に外国人観光客の宿泊キャンセルが相次いだ北安曇郡白馬村で、スキーシーズン入りを前に、「痛手はこの冬から」と影響の長期化を懸念する声が宿泊業者らから上がっている。白馬商工会はキャンセルの実態把握に乗りだすことを決め、11月10日には東電に対する損害賠償請求の説明会も開く。
スキー場が六つある白馬村は近年、冬季の海外誘客に力を入れており、昨年の外国人宿泊数延べ4万3千人余のうち冬季が約3万7千人と8割超を占める。今年は3月11日の東日本大震災後、放射線被ばくを恐れる外国人のキャンセルが続いたが、例年、入り込みピークは2月下旬まで。「アジア圏を中心に延べ約150人がキャンセルした」というホテル担当者も、最小限の被害に収まったとみる。
だが「本当に不安なのはこれから」と、村観光局インバウンド(海外誘客)専門委員会の委員で、ホテルの海外誘客担当の福島洋次郎さん(36)。現在、今冬の予約が例年の半分以下の宿もあると漏らす。10月にシンガポールを営業で訪れた際は、家族連れから直接、「子どもへの健康被害が心配」と放射能への不安を訴える声を聞いたという。
同村神城のスキー場ではことし1、2月、計8回にわたって外国人スキー客向けに和太鼓演奏などのイベントを開催した。しかし来年は行わない。担当者は「集まる見込みがないから」と言う。
現在、外国人の宿泊予約が例年の7割にとどまるホテル社長も、相手国の代理店情報などから「原発事故が主な理由なのは間違いない」と受け止めている。以前泊まったことのある外国人向けに安全PRの案内も送っているが、表情は厳しい。「日本離れの現状に東電はどう対応するのか。春先のキャンセル補償に加えて聞いてみたい」と話す。
県内などの外国人観光客のキャンセル補償について東電は9月、国の原子力損害賠償紛争審査会の中間指針を踏まえ、5月末までにキャンセルがあった観光業者を対象に減収分を支払う方針を示した。一方、村観光局は震災直後にキャンセル数を調べて以降の長期的な被害実態は十分把握できていない。白馬商工会は、正確な数値を得る意味も込めて説明会を東電に要請することにした―とする。
東電によると、これまで福島県からの避難者を対象にした説明会はあったが、観光業者向けは県内初。商工会の担当者は「さまざまな事例について詳しく説明を求めたい」。東電は今後発生し得る観光被害への賠償について「現時点で明確な方向性は出ていないが、個別に状況を聞いた上で対応していきたい」(東京電力広報部)としている。
〔信濃毎日新聞〕