自主検査用の米、国が没収…住民落胆 福島・川内
福島第1原発から30キロ圏内の福島県川内村で、放射線量を自主検査するため、国の作付け制限区域で有機米を育てていた農家秋元美誉(よしたか)さん(68)のコメが収穫後、国に没収された。「自主検査の権利まで奪われるとは…」。農業再生に向けた「希望の米」の成長を見守ってきた村の住民らは複雑な思いを抱えている。(木村信行)
今月3日。収穫直後の秋元さんの田に福島県と川内村の職員3人が国の代理で訪れた。「コメをすべて廃棄するように」
根拠は8月に改正された農林水産省令。作付け制限区域の米穀について「都道府県知事の指示に従い、廃棄すること」との文言が加わり、同省が通知していた。懲役1年以下または罰金100万円以下の罰則も付いた。
省令改正を知らなかった秋元さんは驚いたが、収穫したばかりの稲穂を無言で再び田にすき込んだ。職員がサンプルを持ち帰り、手元には一粒も残らなかった。「情けねえけど仕方ねえ」
国は4月、農作物の中で唯一、コメの作付け制限を指示。原発から半径30キロ圏内と、飯舘村など放射線量の高い一部地域を対象にした。
だが作付けしなければコメの放射線量は分からない。秋元さんは「どれだけセシウムが出るか。復活は可能か。自分で試さないと、机上の論理で来年も駄目と言われかねない」と田植えを実行。収穫したコメは自費で検査し、出荷せずに廃棄すると公言していた。
「東京電力の補償に影響しかねない」と心配する声があったものの、川内村の放射線量が比較的低いことが分かると、村内では「農業再生に向けた希望の米」と呼ばれるようになったという。
「消費者の安全を守る国の立場は分かるが、自主検査のコメまで奪う必要があるのか」と同村商工会長の井出茂さん(56)。コメの成長を見守ってきた鐸木(たくき)能光さん(56)も「お上を信じろ、村人は余計なことをするなということか」と憤る。
農水省は「作付けの目的に関係なく、監視対象にする必要がある」と説明する。福島県は「省令がある以上、例外は認められない。(コメの)検査結果は来春の作付けの参考にしたい」と話すが、検査方法やデータの公表の有無については明らかにしていない。
(2011/10/27 10:42)
〔神戸新聞〕
8月に改正された省令で没収とはなんとも酷い話。
見事な後出しじゃんけん。
すでに、国民は政府の発表を信じれないと思うのですが、検査方法やデータの公表さえ無いのなら、ますます国の測定データは信用できないでしょう。
そこにあるものを公表しないというのは、百害あって一利なし。
後ろめたいところが無いのなら、国の測定のほかに民間の測定を認めるべき。
その上で、国民たちの評価に任せるべきじゃないですか?
この国は民主国家なのでしょうか?