今年も正倉院展の図録を購入しました。
あとから見直すのはなんとも面白いです。
今年の目玉は、「赤漆文欟木御厨子(せきしつぶんかんぼくのおんずし)」や「鳥毛立女屏風 (とりげりつじょのびょうぶ)」6扇などでしょう。
しかし、前者は聖武天皇の愛用品を入れていたものとはいえ地味ですし、後者は過去にも目玉として扱われており、今回は6扇勢揃いなのですが、ポスターなどからは外されたようです。
ということで、今回のチケットや図録に使われたのが「金銀平文琴(きんぎんひょうもんきん)」。
写真を見てもなんだかさっぱり分からないと思いますが、琴です。
表面は金、裏面は銀で装飾されている、目の覚める一品でした。
数年前まで、正倉院展ではその楽器を鳴らしてみるコーナーがあったのですが、今年のこれは弦を張って鳴らして欲しかったです。
「鳥毛立女屏風 (とりげりつじょのびょうぶ)」については、やっぱり現物を見た方が良いです。
教科書などに載っているのは、画像も小さくて、なんとも真っ平らな感じで良さが感じられなかったのですが、現物は立体感が感じられて良かったです。
3枚目の写真は靴。
「衲御礼履(のうのごらいり)」といいます。
大仏開眼の式典の際に聖武天皇が履いていた靴とのこと。
見ての通りに実用性はありません。
たまたま、大学の先生と学生さんが横で見ていて話をしていたのですが、その横で私が自分の靴を脱いで横に並べたところ、最初は噴き出して、そのあとに感心されました。
「たいせつなことですね」と笑っていましたが、おおよそのサイズを知るというのは大事なことだと思います。
ちなみに、だいたいサイズは28・9くらいでした。(笑)
次は「螺鈿箱(らでんのはこ )」。
「紺玉帯残欠(こんぎょくのおびざんけつ)」というベルトが出陳されていたのですが、それの入れ物です。
残欠というのは、欠けて残っている一部のものに使われます。
こんな立派な箱に入れていてもベルトは破損してしまっているのですが、箱はかなり美しい。
漆がいい感じの色合いになっていて、螺鈿の状況も美しい。
花の真ん中の水晶は、水晶を填め込む前に下に絵が描かれています。
細工の細かさが見事です。
次は「粉地彩絵八角几(ふんじさいえのはっかくき)」。
仏前に備えるものを置く台なのですが、私はこの側面に描かれている「暈繝彩色(うんげんさいしき)」というのが大好きなんです。
グラデーションで立体感を出し、補色を使いまくってド派手。
色相環という考えがまだ生み出される前に完成している技法というのが感動します。
理論ではなく、経験で生み出されるということに共感するのです。
挙げていくとキリがないので、最後は「続修正倉院古文書別集 第四十八巻(ぞくしゅしょうそういこもんじょべっしゅう)」。
この落書きの「大大論」はやっぱり人気で、来年の正倉院カレンダーの5月にも使われています。
漫画や人物画、風刺絵などという言葉が無かった時代に、コミカルに人物を切り取っているのが微笑ましく感じます。
「紫檀金鈿柄香炉(したんきんでんのえごうろ)」や「伎楽面 師子(ぎがくめん しし)」とその復元模型など、面白かったものはまだまだあるのですが、ここまでにします。