歴史好きです。
オフシーズンの神社仏閣巡りも、歴史好きという趣味と冬に備えての体力低下を防ぐためでもあります。
やっぱり現地や現物を見るのは大切ですね。
写真を見て想像するのと、現地や現物から感じるのは大きく違います。
一時期は蜜月関係ともいえる秀吉と利休の関係が壊れて切腹させられてしまったのは、歴史上の事件の中でもいろいろな憶測が飛びかっている1つです。
いろいろな本を読んでいろいろ考えていたのですが、今年の夏に初めて醍醐寺で秀吉の作った三宝院の庭を見てストンと納得してしまいました。
こりゃ仲が悪くもなるや・・・と。
秀吉は基本設計をしただけで、すべての完成を見る前に亡くなってしまうわけなので、この庭=秀吉とするわけにはいかないですが、入ってまず目につくのが蘇鉄。
一つ一つの由来などは分かりませんが、当時からあるとしたら島津家に持ってこさせたに違いありません。
京都周辺には聚楽第からの移されたものが多いので、ひょっとしたらこの蘇鉄もそのようなものかもしれません。
当時にはかなり珍しいものだったでしょう。
ザッと見ても、楓や椿なども植わっているし、何よりも松。
植物には詳しくないのですが、数本植わっている松も種類が違います。
石も、細川家からふんだくった「藤戸石」を筆頭に「鯉魚石」や加茂川の流れをあらわした三石などこちらも種類が豊富。
これらを見てしまったときに、「なんと落ち着きのないことか・・・」とつくづく思ってしまい、こんな庭を考える秀吉が分かってしまった気がしました。
それに対して利休は、とことんムダをそぎ落とし黒との対比で鮮やかに見せることによって客をもてなすことを考えいたように思います。(私の利休観です)
それでそれは美しいのですが、凛とした厳しい美しさを感じるのです。
よくよく見れば、庭園のあちこちに架かる橋も、木橋・土橋・石橋と様々。
「利休なら松も一種類に統一したり、橋の種類も揃えたのではないか・・・」と思うと、こんな2人が火花を散らして影響を方々に散りばめていれば、激突は必至だったのでしょう。
天下を取ったばかりの秀吉は、主人である信長の茶会を取り仕切っていた利休に遠慮もあったでしょう。
利休にしてみても、芸術の部分では秀吉は弟子と思っていたところもあったように思います。
しかし、最初は成り上がり者だった秀吉もそのうちにその立ち位置に慣れてくる。
そうすれば、師匠面する利休を煩わしくも感じるでしょう。
シンプルと黒を好み、茶室まで小さくしてしまった利休の嗜好に対して、この時代に多く作られた唐破風門は大きく派手で華やかで、利休好みの黒を使いつつもその黒を引き立て役として秀吉の好きな金をふんだんに使っている。
さらには黄金の茶室。
黄金の茶室は発想が田舎臭い・成り上がりなどという意見もありますが、大阪城の複製を見ると朱が金を引き立てて、素人目にも美しい。
しかも、その中に凛とする厳しい美しさも存在する(ように私には思う)のですから、利休にしてみれば面白くなかったでしょう。
結局、この2人は、最初の利害関係が一致していたからツルめただけで、お互いの望みがある程度到達してしまえば、性格の合わない2人が合うはずがなかったのでしょう。
どちらも芸術の世界で相手の上に立ちたかったのでしょうが、不幸なことに秀吉は天下人だったのでどうしても政治が絡んでしまうこと。
独裁者は、どんなことにでも負けるわけにはいきません。
最後は利休の死をもって決着させることしかなかったのでしょう。
こんな書き方をすると、三宝院へ私がひどい感想を持っているかのようになってしまいますが、そんなことはありません。
強いていうなら、三宝院はUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)。(笑)
いろいろな映画の美味しいところを寄せ集めて、いろいろな人に楽しんでもらおうというというのがUSJ。
三宝院は、例えば蘇鉄、楓、椿などをとっても、春の様々な木々の新緑、夏の蘇鉄、秋の紅葉の楓、冬の椿に積もった雪など、分かりやすい景色の美しさを体感できるように作られているように思います。
実際、春夏秋冬のすべての季節にこの庭がどのような表情を持つのか興味は尽きません。
縁に腰掛けて風に吹かれながら庭を見てみると、こういう庭を手に入れて、休みに日にはボンヤリとここで過ごしたいものだと思いました。
利休の作ったものは、作ったといわれている茶室が2つ残っているだけだそうです。
もちろん、庭園などは作っていないので比べるものもありません。
あくまでイメージですが、利休の美というのをあえて最近行ったテーマパーク系などに強いて例えるなら島根県立古代出雲歴史博物館なんて感じではないでしょうか。(無理があるなぁ…)
展示されているものは物凄いものですし、レプリカやミニチュアやCGによってたいへん分かりやすくなっているのですが、底の底に迫力というか、威圧感を感じてしまう…。
博物館の周りはかなりキレイに整備されているのですが、ここではのんびりというよりも自分の知識への「鍛錬」って感じがしてしまいますね。(笑)
まあ、庭園に対する基礎知識をきっちり勉強していない通りすがりのたわごとなんですが。