崩れた「安全神話」…原子炉より危険なプール
日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県敦賀市明神町)で3月30日、福島第一原発の事故を教訓に行われた使用済み核燃料プールへの初の注水訓練。防火水槽から復水タンクまで200メートルを計11本の真新しい消防ホースで結び、原電社員らはプール建屋の貫通口から水を注ぐ手順などを確認した。
同じ頃、福島第一原発4号機では、全電源喪失でプールの水が蒸発し、燃料が露出して溶融するのを防ごうと、損壊した建屋外壁からプールへの懸命の放水が続いていた。
「まさかプールがあんな状況になるなんて。水素爆発による建屋の損壊、外からプールへの放水など考えたこともなかった」。訓練を案内していた原電担当者も、福島の惨状に驚きを隠せなかった。
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使用済み核燃料は、新燃料にはない、プルトニウムやセシウム、ストロンチウムなどの毒性が強く、半減期が長い放射性物質が含まれ、長期間熱を出し続ける。
頑丈な格納容器に覆われた原子炉に対し、使用済み核燃料を長期保管するプールを覆うのはコンクリート建屋の外壁だけで、丸裸に近い。福島第一原発では、1~3号機でもプールから白煙が上がるなど遮蔽能力がない分、いったん事故が起きれば、原子炉よりも危険なことが露呈した。
元美浜町議の松下照幸さんは「地震でプールが損傷した場合の危険性は町議会で指摘してきた。電力会社が想定したくないと無視し続けた結果が今回の事故だ」と憤慨する。
県内の商業用原発13基のプールには5月末現在、使用済みと、まだ使う予定の燃料計8134体を貯蔵。ポンプで水を循環させて水温を一定に維持しているが、循環が止まれば福島第一原発1号機と同型の原電敦賀1号機のプール(水量約1000トン)は3日で沸騰するという。
福島の事故後、関西電力は美浜、高浜、大飯各原発に計12台しかなかった消防ポンプを160台追加。関電、原電とも消防ホースを接続してプールに直接注水できる配管ラインの新設などを進める方針だ。
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「運転が続く限り、使用済み核燃料は増え続ける。当面プールに貯蔵するほかない。あと6~7年で満杯だ」
県内に原発11基がある関電にとって、使用済み核燃料の搬出は最大の課題の一つだ。
関電、原電は燃料を収納する枠の間隔を詰めて、より多くの燃料を保管できるようにプールを改造する「リラッキング」を既に実施済み。だが、使用済み核燃料を再処理する日本原燃の再処理工場(青森県六ヶ所村)は試運転でトラブルが続出、来年10月予定の操業開始が、福島の事故で遅れる可能性が出ている。さらに県外での立地を検討している中間貯蔵施設も、関電原子力事業本部の広報担当者は「福島原発事故で新規立地は一層難しくなった」と嘆く。
杉山亘・近畿大原子力研究所講師(原子力安全学)は「プール内の使用済み核燃料は、福島のような事態を想定すると安全上は少ない方がいい。電力供給の一定割合を原子力に依存する以上、使用済み燃料の“行き先”など後処理の問題をもっと真剣に考えるべきだ」と指摘する。(藤戸健志)
◆メモ◆
使用済み核燃料プール 原子炉で使い終わった燃料を水に漬けて冷却保管する設備。核燃料は炉から取り出しても残留熱(崩壊熱)を出し続けるため、放射線を遮断しながら燃料を冷却するために少なくとも2年程度プールで貯蔵する。ポンプで水を循環させて蒸発する水を補い、水温をおおむね40度以下に保っている。
(2011年6月20日 読売新聞)
このブログで原発を扱いはじめた最初の頃に書いたと思います。
ふくいちでは、1号機の炉とプール、2号機の炉とプール、3号機の炉とプール、4・5・6号機のプール、さらには使用済み燃料棒約6400本の入ったプールが別にあり、都合10ヶ所を制御しきらなければなりません。
それにしても、3号炉のプールのことをトンと聞きませんが、これの発表も株主総会の後なのでしょうか。