セシウム薄め流通 ブレンド茶、園芸用土…規制値以下に
東京新聞 10月3日
福島第一原発事故で放射性物質が拡散し、さまざまな食品や物に暫定規制値が設けられた。規制値を下回れば「安全」とのお墨付きを得られるため、福島から遠く離れた産地の物と混ぜ、放射性物質の濃度を薄めて販売する業者もいる。現時点で違法とはいえないものの、商品の安全性を疑う消費者、風評被害の拡大を懸念する生産者から不信の声が出ている。 (志村彰太)
■混合
本紙が調査したところ、少なくとも園芸用土や緑茶で、放射性セシウムを薄めた商品の流通事例が確認できた。
園芸用土のケースでは、放射性物質の暫定規制値が決まる前に、浄水・下水汚泥を原料の一部としていた。汚泥には植物の成長に欠かせないリンやカリウムなどが大量に含まれ、これまでも鉱物や土に1~2割ほど混合させて園芸用土に利用されてきた。
汚泥の放射性物質は6月16日まで基準がなく、神奈川県内の一部の浄水場からは、4月から同日までに計4538トンの汚泥が加工業者に販売された。
緑茶のケースでは、規制値はクリアしているものの、ある程度のセシウムが含まれている茶葉2割と、原発から遠い九州産の茶葉8割の割合でブレンドしていた。
■釈明
放射性物質を含む汚泥が出た浄水場の多くは、基準が示されるまで出荷を止めた。既に加工業者に出荷した浄水場運営会社は「検出されたのは低いレベル。加工すればさらに薄まる」と釈明。「最終的な責任は、製品化して売る業者にある」と話した。現在、「園芸用土への使用は控えるべきだ」との国の指示が出ており、道路工事現場などの埋め戻し用として、業者に売却しているという。
緑茶の製造業者によると、出荷制限を免れた茶葉は収穫量が少なく、採算をとるためにブレンドした。担当者は「混ぜていることを包装に書いているので問題ない。より安心な商品を提供したかった」と述べた。
■疑心
こうした事例は違法ではなく、放射性物質を含まない商品と混ぜれば、人体への影響も少ないとみられる。しかし、「薄めて売る」ことが重なると、消費者の疑心暗鬼や混乱を招く。以前から広域で集めた原料を混合している牛乳や、ブレンド米にも風評被害が広がる恐れがある。
全国消費者団体連絡会の阿南久事務局長は、問題解決の方法として、「原産地の情報を都道府県別に詳しく商品に記載すれば、消費者が安心して選ぶことができる」と提案する。
だが、園芸用土には原産地の表示義務がなく、業界団体の自主規格でも定めていない。また、国の食品表示基準では、ブレンド米や加工食品は「国産」と記せばよく、産出元の都道府県表示を義務付けていない。消費者庁も「ブレンド品は産地の入れ替えがあるので、細かく表示するのは現実的でない」と静観する構えだ。
これに対し、農業情報研究所主宰の北林寿信さん(72)は「国の役割は放射性物質の拡散防止だ。薄く広く流通させるのは、国が汚染拡大を容認したと映る」と批判。JA全農福島も「放射性物質が検出された農産物は一切、流通させないようにすれば、風評被害はないはずだ」と不信感を募らせる。
だが、現状では、業界の自主的な取り組みに任せるしかない。「国産」と「輸入」の表示がこれまで問題になってきたように、国による新たな対策が求められている。
気が遠くなる。
コンクリートとかもそうだけど、どんなに注意して、遠ざけようとしても、知らず知らずのうちに、セシウムが忍び込まれていく。
緩やかな殺人行為だということを自覚していますか?