九電社員、農家のふりして質問!? 第三者委最終報告
2011年10月01日更新
「作られたイベント世論」-。九州電力の第三者委員会がまとめた最終報告は、日本初となるプルサーマル導入の決断材料となった佐賀県主催のプルサーマル討論会での「仕込み質問」の実態を明らかにし、公正であるべき討論会でゆがんだ世論誘導を図った九電と佐賀県の姿勢を強烈に批判した。
報告が「露骨」と表現した仕込み質問は、九電が18人の質問者を用意して26問の質問を割り振った。不自然さがないように会場に満遍なく配置し、実際に7人が質問した。
その質問内容も周到だった。「時速100キロで走ると脱線するカーブがあって、今では時速60キロで走っていたと、これからは62キロとか63キロで走ることになるのでしょうか」と、プルサーマルの安全性を周知する意図がうかがえる。「運転開始して30年近くになるが、私の家で作っている米とか野菜が放射能の影響で売れなくなったという話は聞かない」という、農家を装ったような内容もあった。
さらに、主催者の県は九電と事前協議を重ね、進行台本の作成なども要請していた。九電に残っていた台本案には「最後の質問は推進の質問で終わる」という記載がある。実際に質問の最後の2人は、ともに九電が仕込んだ質問者だった。
報告書は、仕込み質問は県の要請ではなく、九電が知事の意向を忖度(そんたく)して行ったとの構図を描いた。ただ、知事については「仕込み質問を認識していた疑いも払拭できない」と踏み込んだ表現も用いた。
第三者委の郷原信郎委員長は、仕込み質問で会場世論をつくり上げたことが、その後の原発再稼働をめぐる県民説明番組での「やらせメール」問題の原型になったと指摘。「透明性が求められる時代に対応できなかった」とし、震災以降、収束の見通しも立たない福島原発事故を受けてもなお、密室での「世論誘導」に走った九電、県の体質を批判した。