東電調査委 料金制度見直しを
10月3日 17時47分
東京電力の経営や財務状況を調査してきた国の委員会は、東京電力に対し賠償金の支払いに伴う厳しい資金繰りに対応するため、徹底した合理化を求めるとともに、高コスト体質の要因となっているとして、料金制度の見直しなどを盛り込んだ報告書をまとめ、3日、政府に提出しました。
福島第一原子力発電所の事故の賠償資金を確保するため東京電力の経営状況を調査した「東京電力に関する経営・財務調査委員会」は、3日、下河辺委員長が野田総理大臣に報告書を提出しました。それによりますと、まず、東京電力の賠償金の支払いについて、今年度末で3兆6000億円余りに達し、その後も1年ごとに9000億円程度、積み上がるという見通しを示しています。そのうえで、火力発電用の燃料費の大幅な増加などで厳しい資金繰りが続くとして、徹底した合理化を促しており、その具体策として、不動産など総額7000億円余りの資産売却のほか、グループ全体で7400人の人員削減や、資材の調達方法の見直しなどで今後10年間で2兆5000億円のコスト削減を求めています。一方で、こうした合理化によっても来年度以降は「資金調達が困難な状況が続く」と指摘したうえで、東京電力が今後、電気料金の本格的な値上げを検討する場合には、「調達費や人件費など徹底したコスト削減が必要だ」として、国民の負担を最小限にするため高コスト体質からの脱却を求めています。報告書ではさらに、東京電力がコストを割高に見積もって電気料金に反映させたことなどで、これまでの料金が適正でなかった可能性を指摘し、高コスト体質の要因となっているとして、料金制度の仕組みや運用方法について、政府による検討を速やかに行うよう求めています。報告書ではこのほか、東京電力が融資などを受けている金融機関に対し、どのような協力を求めるかについては、今後、資金援助を行う原子力損害賠償支援機構で検討されるべきだとしています。今回の報告書を受けて、今後、東京電力が資金援助を受ける前提となる「特別事業計画」が策定されることになりますが、報告書が指摘した内容にどこまで応えられるかが焦点となります。
委員会の報告書について、東京電力の西澤俊夫社長は、「会社にとって大変厳しい指摘が含まれているものと認識しているが、内容を真摯に受け止める。経営の抜本的な効率化・合理化を進めるとともに、被害者の皆様に対する公正かつ迅速な賠償の実施に努めて参ります」というコメントを出しました。
報告書がまとまったことで、原発事故の被害者に対する賠償金の本格的な支払いに向けた作業が進むことになります。東京電力は今後、先月、発足した「原子力損害賠償支援機構」の下で、向こう10年間を想定した「特別事業計画」の策定作業を急ぐことになります。特別事業計画は、東京電力が機構から損害賠償などに必要な資金援助を受ける前提となるものです。この中では、東京電力の事業や収支の具体的な見通しや、経営合理化策のほか、融資を受けている金融機関からの協力を取りつけることなどが盛り込まれる見通しです。東京電力が実際に機構の資金援助を受けるには、政府から事業計画の内容が認定される必要があります。