菅首相、原発質疑で責任逃れ発言連発
菅直人首相(64)は23日、衆院東日本大震災復興特別委員会の質疑で、福島第1原発1号機がメルトダウン(炉心溶融)している可能性を、震災発生翌日の3月12日に把握していたことを示唆した。「事実を知っていてうそをついたのではない」と述べたが、東電が認めたのは発生約2カ月後で、「国民をだましていたのではないか」と批判を浴びた。1号機への海水注入が一時中断した問題でも自身の関与を否定するなど、責任逃れに終始した。
菅首相は、公明党の斉藤鉄夫議員からの追及で馬脚を現した。原発事故発生後、首相にとっては大学の後輩で、電話でも相談した“専門家”の斉藤氏は、故障していた水位計が当時から不自然な動きをし、高い放射線量が記録されていたデータを示して言った。「水位計通りに燃料棒が水に浸っていたら、(海水を入れることで恐れがある)再臨界の議論が出ることはあり得ない。再臨界の議論があったなら(水が足りないため)メルトダウンを認識していたということ。隠していたとしか思えない」。
菅首相は「当時の認識は(炉心上部の)3分の2が水に浸っていた状況だった。ただ、ほかの意見があるのも分かっていた」と答弁。さらに「それが間違いだと分かる生のデータがあるわけではなかった」と述べ、正誤は別にしてメルトダウンの可能性も認識していたことを明かした。
しかし、東電が1号機のメルトダウンを発表したのは、震災発生から約2カ月後の今月15日だった。斉藤氏は「メルトダウンもあり得るという議論があれば、国民に示して情報発信すべきだった」と、菅首相や政府による“隠蔽(いんぺい)”だと指摘したが、菅首相は「知っていてうそをついたのではない」と防戦一方。しかし、菅首相が助言を受けていたとする原子力安全委員会の班目春樹委員長は「当然、私は燃料の一部が溶け出している認識は持っていた」と、メルトダウンの情報を共有していたことを示唆。菅首相は「メルトダウンが分かっていた、いなかったではなく、いずれにしても水を入れる必要があった」と、論点をずらした。
1号機への海水注入が一時中断した問題では、責任逃れに終始した。「私や(官邸)メンバーが止めたことは全くない。(東電から)報告はなく、報告が上がっていないものを、やめろとか言うはずがない」と強調した。しかし、今月2日の参院予算委員会では海江田万里経済産業相が「総理から重ねて、本格的な注水をやれと(指示があった)」とし、菅首相の関与を認めている。質問した自民党の谷垣禎一総裁は終了後、「うその上にうそを塗り重ねている」と、菅首相の対応を厳しく指摘した。
[2011年5月24日8時10分 紙面から]